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2016.12.08

“変態”はヒーローだ!? みうらじゅん、安齋肇のドリームタッグで「問題作」作った理由

みうらじゅん(左)、安齋肇(右)
みうらじゅん(左)、安齋肇(右)
写真=伊藤さゆ

文=轟夕起夫/Avanti Press

この二人が手を組んだら、一体どんな映画が生まれるのか? サブカルスターにして“一人電通”みうらじゅんが企画・原作・脚本を担当、そして“ソラミミスト”としてもお馴染みのイラストレーター、アートディレクターの安齋肇が初監督を手がけた『変態だ』。これはタイヘンだ。おまけに主演は、シンガーソングライターとして活躍する前野健太(11年に第14回みうらじゅん賞を受賞!)。“違いのわかる人”にとってはドリームタッグである。

みうら 「“変態”って元々、使うときはけっこう覚悟がいる言葉だったのに、今はわりとみんな、軽く口に出してライトなものに成り下がっているじゃないですか。それをもう一回引き上げたいなあ、と。原作の小説を書きながら、そんなことを考えてましたね」

安齋 「僕は“変態”そのものに関してはあまり思うところはなくて。ただ、この小説の主人公の“変態していく”、まさに移りゆく様子にすごく興味があったんです。どんどん変わっていくじゃないですか、容姿も含めて。それを追っかけていくだけでも面白い。最後はなんだかヒーローみたいに映っていたらいいなあって」

“ポルノ映画を撮ってほしい”と頼んでも、想定通りのものは絶対に撮らないはず

みうらじゅん

一浪の末に都内の二流大学に進学し、偶然入ったロック研究会での活動をきっかけにミュージシャンとなった男が主人公だ。彼は、妻(白石茉莉奈)と生まれたばかりの息子と共に家庭生活を送りながら、愛人(月船さらら)との関係を絶てずにいる。そんな危うい日常が、雪山でのライブ公演を機に一変する!

みうらさんは、原作小説の執筆中から主人公に前野健太をイメージしていたという。では今回、監督に安齋さんを選んだ理由とは?

みうら 「安齋さんもね、(96年第3回の)みうらじゅん賞受賞者なんですよ(笑)。いや、これまで安齋さんには本の装丁もたくさんやってもらったし、自分のイベントのポスターも作ってもらった。いろいろお願いしてきたんですが、いつも安齋さんはね、考えつかないことをやるんです。やり口がロックというか(笑)。根底がロックスピリッツで満ち溢れている。だから“ポルノ映画を撮ってほしい”と頼んでも、想定通りのものは絶対に撮らないはずで、そこがすごい楽しみだった」

年に何回かは安齋さんに自分の足元を問われている気がする

安齋肇

これまで『アイデン&ティティ』(03)、『色即ぜねれいしょん』(09)と、自伝的な作品が(監督・田口トモロヲによって)映画化されてきたが、この『変態だ』は「ある種の自分の未来予想図」(みうら)であるそう。

安齋 「たしかに、自伝的ではないけれども、常識を逸脱することをキープオンし続けるその頑なさ、ブレなさは“みうらじゅん”という人そのもの。そこはすごく出てるよね。僕としては前の2作、トモロヲさんが撮られた映画に寄ってしまったら失礼だな、という気持ちがあって、だからモノクロを選んだのかもしれない。それに同じことをやったら勝てないからね(笑)。ぜんぜん違う土俵に持っていきたかったんです」

盟友同士と呼んでもよい、長い付き合いの二人だが、ベタベタはしておらず独立独歩のスタンスを貫いている。

みうら 「うん、互いに歩み寄ることもないし、擦り寄りもしない。例えば安齋さんがプリンスを推しても“じゃあ聴いてみよう”って俺はならなかったし、安齋さんもボブ・ディランにハマることもなかった。面白い関係だなと思います(笑)。俺にとってはね、実は怖い存在でもあるんですよね。年に何回かは安齋さんに“みうら君、その考え方、ロックじゃないよ”と言われるんじゃないかって。自分の足元を問われている気がする」

その発言に対し、「えっ、そうなの?」と驚く安齋さん。

最後にやはりいつものお楽しみ、二人の絶妙な掛け合いもご紹介しておこう。

みうら 「次に映画をやれたら今度は安齋さんに主役を張ってもらおうと目論んでいるんだけど(笑)」
安齋 「やめてよー。俺が亀甲縛りされるの?」
みうら 「そう。しかもタイトルは違うのに同じストーリーで。観客が『何これ、同じ話じゃん』って……」
安齋 「……途中で気がつく。怖いな。普通の人はやらないけど、みうら君、本当にやりかねないからなあ〜」

そう言って、「くふふふ」と安齋さんの、あの人を幸せにする笑い声が響いた。

『変態だ』

『変態だ』
映倫:R-18
12月10日(土)より新宿ピカデリー他、全国順次公開
配給:松竹ブロードキャスティング アーク・フィルムズ
監督:安齋肇
企画・原作:みうらじゅん(原作「変態だ」小説新潮掲載)
脚本:みうらじゅん、松久 淳
出演:前野健太、月船さらら、白石茉莉奈 他
(c)松竹ブロードキャスティング

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