映画

2016.04.25

降臨しているのは神かヒーロー!? 東出昌大インタビュー

文=高村尚

東出昌大
撮影=久美雪

去年、Eテレの「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」に、東出昌大と「桐島、部活辞めるってよ」の原作者の朝井リョウが出演した。そのとき、朝井は東出に対して「おにぎりの具についてのインタビューあったんだけど(あなたは)なんて答えたと思う? “僕がオススメするおにぎりの具は、しぐれ煮にする細い牛肉を、すきやきのタレで炒めて、刻んだニンニクの芽で和えて韓国海苔で巻いたやつ”って。2013年11月です。海苔にまで言及している。すごいよ、これ。構成作家いるんじゃないかな」と発言。“構成作家がついている”――この感想、実は今回のインタビューでも感じたこと。哲学に近い感じの思いを淀みなく語る東出昌大には、まるで新作映画『ヒーローマニア‐生活‐』に合わせ、“ヒーロー”か神的ななにかが降臨しているようにさえ感じられた。先の対談で朝井は「仏度(ほとけど)が増している」とも言っていたが、まさにそんな感覚。町のチンピラを懲らしめるヒーローチームを結成したコンビニバイトの中津を演じた東出昌大に聞く。

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『ヒーローマニア-生活-』2016年5月7日公開
©福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」製作委員会

――新作『ヒーローマニア‐生活‐』は、単純に正義を叫べない今の時代の“ヒーロー”を描いています。東出さんはヒーローをどんな存在と捉えていますか?

東出 好きな本――歴史学者の磯田道史さんの「無私の日本人」のあとがきに、“本当の傑物とは清濁併せ持つ人ではなく、濁がなく、汚れているものを浄化することができる人”という言葉があります。たとえばコンビニの店員さんが疲れていて、「ありがとうございました」という言葉が不機嫌そうでも、こちらも「ありがとうございます」と返す。そうしたら店員さんもひとつ報われる思いがすると思うんです。タクシーに乗っても、飲食店に行ってもそう。ありがとうございますとか、おかまいなくというようなささやかな心遣いをすることで社会を浄化できる人。それがヒーローなのかなと思っています。英雄を欲するときその国は貧しいとか、悲劇が起こり、激動の世の中だから英雄が生まれるというのもわかります。そういう時代であればこそ、互いに気を遣い合うことで世の中すごく変わると思うんですよね。そうあればいいのにと思います。

――いま用意されていたかのようにスラッと答えられましたよね? それ、いつ頃から思っていたことなんですか?

東出 ずっと漠然と思っていましたが、ラストで中津が不条理なものを注意できるようになりますよね。小さなことかもしれないけど、それだけで中津の生活が大きく変わるなら、それが日常全体となればかなり大きなことになるんじゃないかと思って。電車のなかで席を譲らない若者や、路上喫煙する人を見てイライラするのもわかりますが、注意して、または気を遣って、お互い気持ちよく終われたら理想的だなあと。

――本当に仏度、増してますね(笑)。豊島圭介監督はウェス・アンダーソンの『ライフ・アクアティック』を意識されたと言っていますが、ヒーローの描き方としては、銃が自動でセットされる器具を装着している『タクシードライバー』のトラヴィスや、腕から糸を放つ『スパイダーマン』のピーターを彷彿させます。ヒーロー映画はいま、悪と戦うのでなく、社会の再生を阻むものとどう向き合えるか悩むヒーロー像を描くようになってきています。日本でそれを描くと、本作の映画のようになるのかなと思ったのですが。

東出 そうかもしれません。撮影中のタイトルは、『生活』(コミックの原題)だったんです。完成した映画で『ヒーローマニア‐生活‐』というタイトルを見て、ヒーローって中津のどこに被っていたんだろう? と考えたんです。で、日常のなかの変化だったと気づいた。終わったあとで気づいたことなんですけど。

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『ヒーローマニア-生活-』2016年5月7日公開
©福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」製作委員会

――本作のような文学的なコミックや、『寄生獣』のようなベストセラー、『アオハライド』のような少女マンガ、コミックのなかの主人公を演じるときに気を付けていることはありますか?

東出 ファンの心理になって、その原作のなかの魅力がどこなのかを考えます。『寄生獣』ならリアルさ、日常生活のなかで起こった身の毛もよだつような怖さ。『アオハライド』なら中高生が憧れる“キラキラ”。現場では三木孝浩監督がこうしたほうがキュンキュンすると演出してくれました(笑)。まずは映画化されることになったゆえんの魅力を外さないようにしようと思っています。今回の原作は、読む方によって笑うところも、ほくそ笑むところも異なると思うけど、変態性は一貫していて(笑)――先ほどおっしゃった文学的な部分が魅力だと思うので、ドタバタコメディではなく、見た方がなにか違和感を覚えてくれるように演じようと思いました。それが福満しげゆきさんのコミックの魅力なのかなと。

――そういう演技哲学ってどこでどのように習得されるんですか?

東出 ものすごく初歩的なことで、一視聴者として、自分が好きな作品が映画化されるときにこうあって欲しいなと思うところからきているんだと思います。『精霊の守り人』の場合は、原作を結構読み込みました。わかりやすく(東出演じる)タンダとバルサ(綾瀬はるか)を対比させるとそれこそヘタレ。重厚な上橋菜穂子さんのファンタジーのなかで、タンダってそもそもいまの日本社会にもいる男の子じゃないかと思ったんです。でも山で自活できて、狩猟もすれば、薬草の知識もあり、暗い森のなかでもひとりで生きていける。武術はできないけど、芯の強さとたくましさはある。だから、それゆえのおおらかさと器の大きさの部分は外しちゃいけないなと思いました。

――役の選び方のふり幅がすごくいいですよね。『寄生獣』『アオハライド』がある一方、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』はもちろん、安藤桃子監督の『0.5ミリ』、石井隆監督の『GONIN サーガ』、黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』。出演作はどう選んでるんですか?

東出 基本的にマネージャーさんに任せていて、最終的な判断は聞いてくださるんですけど、かじ取りはお任せしてます。役者になって4年なので、自分のやりたい目線で選ぶと幅が狭くなってしまう。片やプロダクションの人は何十年もかじ取りしてきたプロなので、僕より大局を見られるし、信頼してます。

――豊島監督との信頼関係は?

東出 結べたかなあ(笑)。以前、豊島監督のWOWOWのドラマ「CLAMPドラマ ホリック~xxxHOLiC~」で、鉄面皮と呼ばれる百目鬼という役をやらせていただきました。原作でも表情の変化がないんですが、実写化にあたりどこまで原作に忠実にするかでがんじがらめになっちゃって、現場を終えてからも反省ばかりで。その豊島監督とのお仕事なので、今度こそ心の底から「東出よかった!」と言ってもらえるようなお芝居がしたいと思っていたし、じゃないとダメだと思って臨んだんですが……。

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『ヒーローマニア-生活-』2016年5月7日公開
©福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」製作委員会

――監督から役についての具体的な注文は?

東出 最初にみんなの分、プロフィールを作ってきてくださったんです。中津のは「浪人して、留年して、新卒で旅行代理店を経てフリーター。30歳」とあるなかに、太文字で「いまは履歴書の賞罰欄を修正テープで消そうか、消すまいか」と書かれていた。それがなんかすごいしっくりきて。自分で書いたのに、修正テープで消そうとするずぼらさ。でも修正テープでは消しきれない過去を持つわけです。中津ってものがしっくりきました。

――中津は東出さんにとって愛すべき人物でしたか?

東出 友だちに持ったら、「おまえもっとはっきりしたほうがいいよ」って言うと思うんですが(笑)、演ってて可愛げのある人ではありました。

――東出さんは、同世代の方との共演ですとえも言われぬ存在感を醸すのですが、歳上の方との共演となるとその時代や場所に生きているリアリティが半端ありません。今回は“若者殴り魔”の日下役・片岡鶴太郎さんとの共演がありましたが、東出さんにとって歳上の俳優さんとの共演とはどんなものなんでしょうか?

東出 まだ咀嚼できていないものもありますが、諸先輩方からいただいた言葉にはあとになってみて気づくことが多々あります。なるほどなと思ったのは、朝ドラ(「ごちそうさん」)で共演した近藤正臣さん(東出さんの父・正蔵役)。近藤さんがあるとき台詞を飛ばされて、「あー、なんやったっけ、なんやったっけ。ああ、せやせやせや」ってまた続きを言い始めたんです。そのとき、なんて自由なんだと(笑)、少し嫉妬を覚えました。まさしく正蔵さんが生きていましたし、方言の表現で頭でっかちになっていた僕は、なんかすごく反発を覚えたんです。その近藤さんと仕事の話をしているときに「どうしたらいい役者になっていけますか?」と聞いたら、「多くを言ってもわからないだろうけど、丁寧にやれ」とおっしゃったんです。近藤さんが培ってこられた丁寧さには幅がある。丁寧に丁寧にお仕事をやってきたから、いまああいう自由なことができるんだろうなと思いました。この話には続きがあってキムラ緑子さん(東出さんの姉役)と話していたとき、あんなにお芝居のうまいキムラさんが「あれ、憧れるわよね」とおっしゃっていたのが印象的でした。みんな個性があっていいし、ゴールはひとつじゃないけれど、先輩方はすごいなと思っています。今年は、ドラマ、映画ともに作品がたくさんあるので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。

『ヒーローマニア-生活-』
原作:福満しげゆき「生活【完全版】」(モーニングKCDX/講談社刊)
監督:豊島圭介 脚本:継田淳 音楽:グランドファンク
出演:東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、山崎静代(南海キャンディーズ)、船越英一郎、片岡鶴太郎
2016年5月7日(土)全国ロードショー
配給:東映・日活

 

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 『ヒーローマニア-生活-』

 

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