映画

2016.05.19

映画プロデューサーで小説家、ヒットメーカー川村元気が語る『世界から猫が消えたなら』

文=岡崎優子

『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』など数々のヒット作を手掛けてきた映画プロデューサー・川村元気が処女小説「世界から猫が消えたなら」を発表したのは2012年。その後、本作は文庫化・コミックス化、さらには中国・韓国・台湾でも出版され累計30万部を突破する大ヒットとなった。著者自身が「映像化できないだろうと思って書いた」小説が、実写映画化された。


『世界から猫が消えたなら』原作者 川村元気

「映画化の話が出始めたのは13年、本屋大賞にノミネートされた頃ですね。映画人として映画にならないものを狙って書いた小説だったので、それが映画化されるのは難儀だなぁと、結論を出すまで1~2年かかりました」

映画化に際し最初から決めていたのは、あくまでも原作者として本作にかかわること。ゆえに、プロデューサーとしてのクレジットはされていない。

「とはいえ、自分は日本でいちばん映画に詳しい原作者だと思うので(笑)、原作者の立場で映画としてやれることはすべてやろうと思っていました。例えば、監督は『ジャッジ!』で映画デビューした永井聡さん、撮影は『告白』でご一緒した阿藤正一さん、音楽は小林武史さん、主演は仕事をしてきたなかでも信頼のおける佐藤健さん、宮﨑あおいさんと、希望を言わせてもらいました。さらに脚本や編集などにも意見を言わせていただきました」


(C)2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

それには明確な理由があった。
「ファンタジーは日本映画が凄く苦手なジャンル。難しい題材だということはわかっていたんです。僕自身はティム・バートンのようなリアルとファンタジーが混じった世界観が好きで、そういうものを自分が日本映画でやれないから、そのフラストレーションでこの小説を書いたところがあります。だから、映画化するなら、それを実現できるチームでやりたいと思いました」
出来上がりについては、「難しい仕事をやりきっていただいた」と、自信を見せる。

原作者として映画に向き合ったことで、新たに発見できたことはあったのだろうか。
「当たり前のことですが、小説って音が鳴らせないんだなと。映画にとってどれほど音楽が武器になるのかを実感しました。あと、このシーンは俳優の顔のアップがあれば1行も書かなくてすむとか、俳優の肉体が映画にとってのアドバンテージになる、と気づきました。それが『バクマン。』にも活かされ、サカナクションに音楽を依頼して音楽的な映画にしたり、漫画を描くシーンをアクションに置き換えたり……。小説を書かなかったらあそこまで意図的にやらなかったと思います」


(C)2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

本作は余命わずかと宣告された“僕”が“悪魔”(佐藤健の二役)と一日の命と引き換えに大切なものを世界から消していく取引を交わすことから話が動く。
「この小説は僕の思想そのもの。死を想像することでしか大切なものが見つけられないんです。そもそも自分に対する期待値はゼロ。いつも、うまくいくはずないと思って映画も作っている。自信をもって公開したことなんて1回もないんです。最強のネガティブな状況を考え尽くすのであとはいいようにしかならない。この物語と一緒です」

現在、「週刊文春」で3作目の小説「四月になれば彼女は」の連載がスタート。
「『世界から猫が消えたなら』は“死”、2作目の『億男』は“金”、そして3作目は“恋愛”をテーマにしています。その3つは僕の中で“人間が決して自らコントロールできないもの”なので永遠のテーマなんです。映画においては、小説や音楽の要素を意図的に介入させて新しい表現ができないかなと常々考えています」

日本映画界では珍しい、小説家としても活躍する川村元気だからこそ仕掛けられる作品に興味は尽きない。佐藤健に「人生最後に観たい映画の一本」と言わしめた『世界から猫が消えたなら』は現在全国にて公開中。

 

この記事で紹介している作品

『世界から猫が消えたなら』

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