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2016.11.18

6カ月に及ぶリハビリを経て、力強くその一歩を踏みしめた湘南DF岡﨑亮平

第15節大宮アルディージャ戦の翌週、湘南ベルマーレDF岡﨑亮平はオフ明けから全体練習に合流した。4月の終わりに練習試合で肉離れに見舞われて以来、じつに6カ月が経っていた。
 
自身にとって初めての肉離れに、「最初は何か分からなかった」と振り返る。
「痛いと思ったけど続けたんですよね。でもやっぱり走れなくて試合を抜けて、次の日に病院へ行ったら肉離れと言われた。ヤマザキナビスコカップ(現:YBCルヴァンカップ)に出て、体も動いていたし、手応えもけっこうあったなかで怪我をしてしまった。これからという感じだったので、ひとことで言えばもったいないという気持ちでした」
 
診断を受け、岡﨑は夏を目指し、リハビリを続けた。だが復帰してわずか3日後、練習中に再び肉離れに襲われてしまう。1回目とは異なり、「やった瞬間すぐ分かった」と語る。
 
「2回目やったときは正直、相当きつかったです。約2カ月かけてリハビリして復帰したので、それをもう1回やるのかという気持ちと同時に、また2カ月もサッカーできないのかという想いが入り混じって、自然に涙が出てきた。痛いとかそういうことではなく、またサッカーできないという想いがすごく強かった。サッカーできないことがいちばんつらいです。普段は感情を押し殺すタイプなのに、自然と涙が出ちゃいました」
 
怪我したその日、曺貴裁監督に呼ばれ事務所で話したが、言葉はまったく入ってこなかった。何を言われたかも覚えていない。
 
気持ちを立て直すきっかけになったのは翌日のミーティングだった。指揮官はその場で岡﨑の怪我に触れた。
 
亮平は上手い選手だとは思わないけど、つねに一生懸命やっているし、みんなもそういう仲間の気持ちを汲んでサポートしてほしい。亮平も、もちろん監督である自分やトレーナー、スタッフに責任はあるけど、おまえ自身にもある。復帰してすぐにまたやってつらいだろうけど、下を向かずに見つめ直せ。指揮官はそんな言葉を皆を前に投げたという。
 
「怪我をしてつらいと誰かのせいにしたくなるもの。でも僕にも責任があると曺さんがハッキリ言ってくれて、たしかにそうだなと、誰かのせいにしないで終わることができた。もっと突き詰めてリハビリをやらなければと思いました」
 
1回目の肉離れとあわせて、リハビリは6カ月に及んだ。岡﨑のひとつの支えになったのが、3月の終わりに右ヒザ前十字靭帯損傷を負った菊地俊介の存在だった。「毎日一緒にリハビリしていました」と語る。
「最初は歩けないし、グラウンドにも来られない。いつサッカーできるんだみたいな雰囲気で、俊くんもそうだったから、毎日のように一緒に室内練習やプールに行きました。お互い負けず嫌いだから、夢中で筋トレもやるし、何かを見つけては競い合って、それがすごくモチベーションになった。俊くんがいなかったらひとりできちんとリハビリできなかったと思うぐらい励みになりました」
 
だから、皆で駆けつけたくだんの大宮戦で菊地が復帰を果たすと、「鳥肌が立ちました」感慨を口にする。
「ひざに器具を付け、僕も送り迎えをすることがあったほどのひとが、普通にピッチに立ち、しっかり走っていた。そう思うと、自分も戻れるし、しっかりやれば試合にも出られると心強く思いました」
 
なかなか勝利を得られぬ日々のなかでも、仲間の前ではできるだけネガティブにならないよう意識したという。だが心掛けの一方で、岡﨑には違う気付きがあった。
「逆にみんながすごく気を遣ってくれて、すごいなと思いました。たとえばアーリアくんとか僕を見ればつねに声をかけてくれるし、グラウンドに出るようになったら誰かが必ず茶々を入れてくる。どんなに負けていてもその空気は変わらずにあった。それはすごく大事だと思うし、このチームのいい面を身に沁みて感じました」
 
「ほんとうにいいチームです」屈託なく続ける。
「2回怪我したことには意味があるとポジティブに考えるようにしていますが、曺さんやチームのみんなの存在が僕をポジティブにさせてくれているところは大きい。アカデミーを含めて僕はこのクラブに長くいるけど、怪我をしていいところがより見えましたし、だからこそ気持ちはより高まった。このチームが好きだし、このチームで結果を残したいという気持ちはたぶん誰よりも強いと自分では思っています」
 
これまでにない感覚が胸に灯る。
「練習からとにかく楽しい。サッカーができているだけで幸せと思えるいまの感覚は、自分のなかで初めてのもの。新しい自分です。サッカーができない時期があったことを忘れないようにしないといけない。試練は毎年やってくるだろうけど、それに負けたらこの世界では終わり。何回試練がやって来ても頑張ってやろうという気持ちに、より今回なりました」
 
先日のJ1最終節名古屋グランパス戦、相手がパワープレーに出た終盤に出番は訪れた。限られた時間のなかで、持ち前のヘディングの強さを発揮しつつ、勝点3奪取に貢献した。新しい岡﨑亮平が力強くその一歩を踏みしめた。
 
【隈元大吾(縦に紡ぎし湘南の)】くまもとだいご。湘南ベルマーレを柱に取材・執筆。クラブオフィシャルの刊行物をはじめ、サッカー専門誌や一般誌、J’sGOAL等に幅広く寄稿。

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