スポーツ

2017.02.21

佐藤寿人と名古屋の縁 “猛犬”ウェズレイの魂を背負う背番号11

以前から、もし佐藤寿人と話ができる機会があるならば、聞いてみたいことがあった。まさか名古屋でその機会に巡り合うとは夢にも思っていなかったが。

ウェズレイのことである。

名古屋グランパスでの6年間で81得点、3年連続20得点以上をマークし、得点王も一度獲得している“猛犬”は、一度ブラジルに帰国した後にサンフレッチェ広島でJリーグ第2のキャリアをスタートさせた。だが、広島の選手として見たウェズレイのプレーは今までのイメージとはまったく違っていた。荒々しいまでのゴールへ向かう気性はそこにはなく、ひたすらにチームの攻撃を支える献身的な姿勢の方が際立った。そして、相棒の若きストライカーの引き立て役に回り、まるで育てているような印象を受けた。

ご察しの通り、その若手FWが佐藤寿人だ。当時24歳で、既にJリーグ屈指の点取り屋として頭角を現していた佐藤だったが、ウェズレイとの出会いはやはり特別だった模様。名古屋の“ピチブー”について問いかけると、まくし立てるように彼との思い出を語ってくれた。

「ウェズレイは得点王を名古屋で取っていましたが、広島では僕をすごくリスペクトしてくれました。『得点王を取ってほしい』ということを公の場でも言ってくれましたし、サポートしたいって言ってくれたのがありがたかったですね。試合中にはウェズレイが自分で決められるボールでも、横にいる僕にパスをしてくれたりもしました。そうやって決めさせてもらった得点もいくつかありました。ウェズレイは本当に最高のパートナーでした。
僕も対戦相手としてグランパスでプレーするウェズレイを知っていましたが、その当時は本当にこんな選手と対戦したくないなという感じで(笑)。彼がボールを持てば得点が生まれてしまうし、簡単に試合が決められてしまう。対戦相手としては何でこんな良い選手が相手にいるんだって思ってました。そういう選手と広島で一緒にプレーできて、本当に最高のコンビになれたと思います」

決めさせてもらった得点というが、それだけのビッグチャンスにしっかりフォローに走っていたからこそ得られたものである。そうした点取り屋としての執念や抜け目なさがあったからこそ、ウェズレイも佐藤に実績を積ませたくなったのだと想像する。ピッチ上の先生と生徒のように見えた彼らのコンビネーションは、実際にもそうだったことが確認できて何だか嬉しかった。

そして国境を超えた彼らの師弟関係は、今なお続いているという。一昨年、中村直志現チーム統括部強化担当の引退試合が行われた際、ゲストプレーヤーとして久々の来日を果たしたウェズレイは、その後の休暇を利用して日本で縁のある地を回っていた。もちろん広島にも訪れ、試合前のセレモニーにも登場している。名古屋で、広島で、旧交を温める最中には、“弟子”への激励も忘れなかったようだ。

「彼はシュートが抜群に上手かったですね。ボールの蹴り方も上手かったですし、広島にいる頃は年齢のこともあって運動量はあまりなかったかもしれないけど、サッカーは点を取るスポーツだし、運動量を競い合うスポーツではありません。そういう点で、相手にとって危険な存在であることの大切さを、ウェズレイは教えてくれました。一昨年ですかね、彼が広島に来たことがあって。『まだまだやらなきゃいけないよ』と言ってくれました。今回、僕がウェズレイの活躍したクラブであるグランパスに入ったのは何かの縁ですし、彼が残して来てくれたものに近づけるように、自分もしっかり結果を残したいと思います」

佐藤寿人の意外な名古屋への縁。“猛犬”の魂も背負った背番号11のゴールスキルに、今季はなおさらに期待したくなった。

【今井雄一朗(赤鯱新報)】いまい ゆういちろう。1979年生まれ。2002年に「Bi-Weeklyぴあ中部版」スポーツ担当として記者生活をスタート。同年には名古屋グランパスのサポーターズマガジン「月刊グラン」でもインタビュー連載を始め、取材の基点を名古屋の取材に定める。以降、「ぴあ」ではスポーツ全般を取材し、ライターとしては名古屋を追いかける毎日。09年からJリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」の名古屋担当ライターに。12年、13年の名古屋オフィシャルイヤーブックの制作も担当。

みんなの声

スポーツ

映画