モテたくて必死だった高校時代
映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は6月25日より全国公開
映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は、好きな子とキスもできぬまま急逝した高校3年生の大助が、地獄で試練に立ち向かう様を描く感動コメディー。宮藤官九郎監督のもとで大助を演じた俳優の神木隆之介が同作を語った。
■俳優業の天国と地獄とは
Q:地獄のセットで、撮影中に体験した天国と地獄を教えてください。
まずセットが変わらないことが地獄でした。最初は美術に感動していたのですが、1か月ずっと居ると本当に地獄に居る気分になり、現実がよく分からなくなってしまいそうなほどでした。それから映画を観ていただくとわかるのですが、地獄でさまざまな拷問を受けているのは僕だけ。そこはやっぱり大変でした。そして天国は、共演者の方々が自由にアドリブをされるので芝居を通して心が動く瞬間があったことです。それがすごく楽しくて。あと、地獄の鬼キラーK役の長瀬(智也)さんの差し入れも天国でした(笑)。
Q:宮藤監督は本作で「追い詰められて輝く神木隆之介」を撮ると公言されていますが、俳優として追い詰められることはありますか? また、俳優業の天国と地獄と言えば?
追い詰められたり、難しいことを提示されたりすると、必ず成功したいというスイッチが入ります。俳優としての地獄は、セリフを噛んで追い詰められることに尽きます。一度噛んでしまうと次も噛むかもしれないと不安になります。心に余裕がなくなって、でも周りの方に尋ねてもどうにもならないことなので、そこは独り勝負。悪い意味ではないですけど、追い詰められていない状況はまずないので、そこは俳優業としての地獄ですね。とても怖いです、毎回。心が折れかける中、自分に「次は大丈夫、絶対にできる」という暗示をかけて立ち向かっていく。するとそれを乗り越えられた時の達成感は天国です! 最終的には、作品を観ていただいて「良かった」という感想をいただければ天国です。
■これぞ青春!謳歌した高校時代
Q:高校生の大助を演じてみていかがでしたか?
僕自身、テンションが高いので大助役は素に近いです。撮影自体は本当に楽しくて、すごく伸び伸びと演じることができました。今22歳ですけど、たぶん心が高校生で止まっているので、高校生の役づくりは無意識です。僕自身が高校時代をすごく謳歌したので、それを思い返せば高校生役をいつ振られても大丈夫です。制服もすんなり着ることができます。
Q:高校生の頃は好きな子のために頑張っていましたか?
頑張っていました! 好きな子のために高校生男子は常に必死。特定の誰かにモテたいというよりも女子全員からモテたくて努力しました(笑)。髪の毛にピンを留めるシーンがあるのですが、あれは僕のアドリブです。実際に僕自身が、モテたいと思って高校時代にやっていたことなので。努力の仕方も自分と大助は同じだなと思いました(笑)。それに少女漫画でモテている人を参考にすることもありましたし、「モテたい!」と言い、モテるための努力を隠さずに見せていました。でも今話していて気付いたのは、本当にモテる人はクールで「モテたい!」なんて言わないし、人の輪からちょっと離れた一匹狼風に寡黙になると思います(笑)。
Q:高校時代を満喫された神木さんだからこその、今の高校生に向けた一言をお願いします。
つい3、4年前まで僕も10代でしたけど、10代のパワーは独特で爆発的。いろいろなことに興味を持ってほしいし試してもらいたいです。過ごし方として大学受験の勉強はいいことですが、学校にいる間は友達との交流や楽しいと思うことを率先してやることが大事。それで高校を卒業してから成人になるまでに就職だとか、進学だとか、自分のやりたいことをゆっくり考える時間に充てるといい気がします。僕は全力でじっくりと向き合いました。大人の一期生(=成人)までの準備期間を楽しんで、自分で進みたいと思う道を選んで、覚悟を決めてください。
■もしも生まれ変わるなら
Q:輪廻(りんね)転生が作品の題材になっていますが、スピリチュアルなことは信じるほうですか?
どちらかというと信じます! うちの家族は縁起がいいことは取り入れるので。例えば風水で、玄関に○○を置くと良いとか。その効果はあったような気がします。それと僕は右利きですが靴下は左足から、靴も左足から履きます。これが逆だとなんとなく気持ちが悪いです。習慣としてだけでなく心理的にも作用しているので、一種のゲン担ぎです。
Q:大助はキスするまで死ねない! という明確な目標を掲げましたが、俳優としてこの役を演じるまでは死ねない! はありますか?
これまで就職活動中とか工場で働く役にふんしたことはありますが、スーツを着た社会人の役を演じてみたいです。会社員、しかも社会人2年目で新入社員に先輩風を吹かして、上司にはヘコヘコする、ずる賢いキャラクターとかいいですね。
Q:では最後に、生まれ変わっても俳優業を選びますか?
俳優にはなりたくないです。次は、物理学者になってノーベル賞をとりたい。バイオリンも弾けて、すごくモテる人になりたいです。完全に福山雅治さんが演じられた「ガリレオ」シリーズの湯川学博士を意識した発言です(笑)。
取材・文:南樹里 写真:尾藤能暢