ミランの新指揮官に決定したモンテッラ監督。 写真は2016年4月3日(Getty Images)
「ルイス・ファン・ハールを招聘するのでは」
「マルコ・ジャンパオロが最有力」
「会長の言いなりになるクリスティアン・ブロッキ続投」
ミランの新指揮官候補については様々な名前が紙面を賑わせていたが、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の就任が現地時間28日に発表された。
■将来有望な人材を確保
ミランは非常に優れた指揮官を手に入れたと言えるだろう。42歳の青年監督は、複数のシステムを使い分ける戦術家として知られ、フィオレンティーナでは後方から丁寧にパスを繋ぐ攻撃的なサッカーを植え付け、低迷していた古豪を欧州カップ戦出場権を争うレベルにまで復活させた。サンプドリアでは結果を残すことはできなかったが、志向するサッカーは近代的。限られた戦力を最大限に活用する術にも長けている。
シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長の一存ですべてが決定するという、悪いイメージが定着しているクラブを選択したことが、不思議なほど将来有望な人材だ。
さて、イタリアの次世代を担うであろう名将は、ミラノでどのようなチームを創るのか。コンパクトな陣形を維持し、チーム全体が連動するパスワークとプレッシングで主導権を握り、自分たちからアクションを仕掛ける能動的なスタイルを目指す公算が大きい。それはクラブやファンが望む、本来の姿でもある。
しかし、それは4-4-2の堅守速攻型で結果が出つつあったシニシャ・ミハイロヴィッチ監督時代とは180度異なるスタイルだ。後任のブロッキ監督は会長に振り回されただけで、プランも何もなかった。つまり、ゼロからのスタート。当然、戦術の浸透にはある程度の時間を要する。
■雑音をかき消すためにもスタートダッシュを
とはいえ、先述の通りミランはベルルスコーニ名誉会長の鶴の一声で、どんなことでも起こり得る不安定なクラブ。上層部の現場への介入は日常茶飯事で、不可解な人事は何度となく繰り返されている。フィオレンティーナを“喧嘩別れ”のような形で去ったモンテッラ監督は、首脳陣との関係性にも気を配る必要が大いにある。
周囲の雑音から身を守るためにも、スタートダッシュが必要だ。2016-17シーズンのセリエA開幕は8月21日。新たな戦いの幕開けまで、すでに2カ月を切っている。万全の状態で新シーズンに臨むため、まずは戦力を精査し、必要な補強を行なわなければならない。プランにそぐわない選手の売却も、同時に進める必要がある。残された時間は長くない。モンテッラ監督の夏は、忙しくなりそうだ。