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『シン・ゴジラ』の”アレ”は実はゴーヤ!? キャラクターデザイン竹谷隆之インタビュー |dメニュー映画×コラミィ

    文=増當竜也、写真=伊藤さゆ/Avanti Press

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    全国公開まで3週間を切った『シン・ゴジラ』。今回はそのキャラクターデザインを担当した竹谷隆之氏にお話をうかがった。

    始まりは2年前の1本の電話から

    特撮作品では『ゼイラム』(91)をはじめとする雨宮慶太監督作品の特殊造形や『仮面ライダードライブ』(14)クリーチャーデザインなどで活躍が知られる竹谷氏だが、ゴジラ作品に関わるのは何とこれが初めてとのこと。

    「2014年の11月か12月くらいでしたか、樋口真嗣監督からお電話をいただきまして『まだタイトルとか言えないんですけど、怪獣で、背びれのあるやつです』と。もうそれでわかっちゃいますよね(笑)。その数日後、庵野秀明総監督と樋口監督と尾上准監督が工房にいらして、打ち合わせが始まったという感じです」

    -その打ち合わせでは、どのようなことを?

    「庵野さんから開口一番『好きなゴジラはありますか?』と聞かれまして、特にないですとお答えしたら『ああ、いいね』と(笑)。おそらくご自分のイメージを忠実に再現してくれることを望まれていたのだろうと思います」
    ちなみに、竹谷氏が最初に見たゴジラ映画は『モスラ対ゴジラ』(64)だったとか。

    「あのときは悪役ゴジラでしたが、その後の、正義の味方になってからの昭和後期ゴジラも、そんなに違和感なく楽しんでいました。当時は子どもでしたから、造型の違いなどもそんなに気にしてはいませんでした。今見返すと、すごく可愛らしいですけどね(笑)」

    庵野総監督が思い描く完全生物のイメージを探る

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    竹谷隆之デザイン『シン・ゴジラ』模型

    では、庵野総監督のオーダーはいったい具体的にどのようなものだったのだろう

    「庵野さんの意向として、初代『ゴジラ』(54)をリスペクトしてやっていきたいということは、最初からおっしゃっていましたね。またゴジラは、人類が畏怖する頂点に位置する完全生物であると。ですから、具体的に、体の部分ひとつひとつについて聞いていきました。
    口はピタッと閉じますか? 『閉じなくていいです』
    耳はどうします? 『なくていいです。頂点なので、音で警戒する必要すらないからいりません』……。
    そんな感じでずっと聞いていきますと、どうやら庵野さんは、人間とは意志疎通ができそうにない、ヤバい感じを出したいのではないかというように思えました」

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    『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.

    現在発表されているヴィジュアル・デザインを見ると、巨大な体躯に比べて腕が退化しているかのように小さい。

    「腕が小さい分、巨大感が出るのではないか。またマッチョ的に強い怪獣の頂点ではなく、どこかいびつで痛々しいけど、それでもものすごい存在感を出したかったし、そこから生物の不気味さみたいなものも醸し出せたらというのがありましたね。今回は、最初からをCGを使おうということになっていたので、着ぐるみの中に人が入る制限を考える前に、とにかく理想的なゴジラを作るため自由にやれたというのもあります」

    -しっぽの長さなどは?

    「庵野さんも樋口さんもしっぽを用いての演出を最初から考えてらしたようで、僕のほうでも割と長めに設定しておいたんです。長過ぎたら切って短くすればいいので、短いのを長くするより楽なんですよ(笑)。そうしたら、この長さでちょうどいいということになりました」

    『シン・ゴジラ』では体中の皮膚の隙間からうかがえる赤い発光も印象的だ。

    「これも庵野さんのほうから『赤っぽくしてみましょうか』ということだったのですが、人類が畏怖する頂点とはいえ、やはり痛々しさとか哀しさの象徴として血の色=赤なのではないかと」

    イメージの共有に自宅のゴーヤが活躍

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    ところで取材中、竹谷氏の後ろの机にゴーヤの小さなオブジェが置いてあり、気になるので聞いてみたら……。

    「うちのベランダの日よけ用に育てたゴーヤで、形が変なものを樹脂で複製をとっておいて、打ち合わせのとき、皮膚はこんな感じですか? と見せたら『ああ、いいですね』と(笑)。ゴーヤって、ある程度縦の流れもありつつボコボコしていて、人が作った造形物っぽくない自然な感じがありますので、これを参考にしながら皮膚など作らせていただきました。イメージも共有できますので、CGチームにもこのゴーヤを渡しておきました(笑)」

    今回はニュートラルな気持で、庵野総監督たちのイメージをどこまで具現化させられるかに心血を注いだという。

    「庵野さんのおっしゃっていることは、こういう演出をしたいからだという明確な理由がありますので、逐一納得しながらやらせていただきました。また今回はメンバーが『巨神兵、東京に現わる』(11/竹谷氏は巨神兵造型を担当)のときとほぼ同じだったこともあり、和気あいあいと取り組むことができました。デザインをあげて以降、追加のオーダーなどはありましたが、撮影現場そのものにはあまり携わっておらず、ラッシュもほとんど見ていません。その分一観客として、完成した『シン・ゴジラ』を存分に楽しみたいと思っています」

    新たな畏怖の魅力を放つゴジラ、ぜひとも劇場で!

     

    『シン・ゴジラ』
    脚本・総監督:庵野秀明
    監督・特技監督:樋口真嗣
    准監督・特技統括: 尾上克郎
    2016年7月29日 全国東宝系にてロードショー
    (C)2016 TOHO CO.,LTD.