異性を学べ!男子高校生の会話を盗み聞き
映画『君の名は。』は8月26日より全国公開
東京に住む男子高校生の瀧(たき)と山深い田舎町に暮らす女子高校生の三葉(みつは)。会ったこともない二人が、夢の中で心が入れ替わり、予想外にドラマチックな物語が展開する話題のアニメ『君の名は。』。主人公二人の声を担当した神木隆之介と上白石萌音、瀧が憧れる奥寺先輩役の長澤まさみが、声の演技へのアプローチや作品への思いを語り合った。
監督への熱い思いが現実に
映画『君の名は。』は8月26日より全国公開
Q:みなさん、アニメでの声の演技はこれまでも経験してきていますよね。
神木隆之介(以下、神木):これまでも多くの作品で声の演技をさせていただきましたが、毎回難しいと感じます。
上白石萌音(以下、上白石):『おおかみこどもの雨と雪』では、ちょっとした役でしたので、初めての気持ちで挑みました。
長澤まさみ(以下、長澤):映画での声の演技は、これで3回目です。普段の女優の仕事とは違った面白さがあるので、チャレンジしがいがあって大好きです。
Q:今回の『君の名は。』に参加すると決まったときの心境は?
上白石:私はオーディションを受けさせていただいたのですが、選ばれるとは思っていませんでした。だから役が決まったときは、夢じゃないかと……。
神木:僕も同じで、「信じられない」というのが正直な気持ちです。上白石さんと一緒に、一部の映像を観させていただきながら、自分たちが演じるのも忘れて「これ、いい映画になりそう」なんて、素直に興奮したよね?
上白石:はい(笑)。
神木:初めて新海誠監督にお会いしたときは、「本当に僕の声でいいんですか?」と聞いてしまいました。
Q:神木さんは新海監督が大好きだったようですね。
神木:そうなんです! 『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』を観て、そこから『星を追う子ども』……。20回以上、観た作品もあります。『秒速5センチメートル』はストーリー画集を手に入れて、主人公の貴樹(たかき)のナレーション部分をすべて暗記したりしました。
長澤:すごい! 神木くんのように新海監督のファンは多いみたいですね。私は監督の過去の作品をまだ観ていなかったので、楽しみにしていました。
役づくりで男子高校生に接近?
映画『君の名は。』は8月26日より全国公開
Q:どんなことを意識しながら役にアプローチしていったのですか?
神木:男子高校生としての瀧と、三葉の心が宿ったときの瀧。両パターンの違いをわざとらしくなく、かと言ってあいまいにならないよう、そのさじ加減を監督と相談しました。最初に録音したのが、心が三葉のシーンだったので、女子になったつもりで演じました。その後、声の高低差によって、本来の瀧を演じました。
上白石:私は「男子の話し方」が未知の領域だったので、瀧の心が宿った三葉のシーンは本当に苦労しました。
長澤:普段の萌音ちゃんは、絶対にあんな乱暴な口調にならないからね(笑)。
上白石:セリフだとしても難しかったですね。「オレ」とかも言ったことがないし。役が決まってからは、街を歩いていても、電車に乗っても、男子高校生にこっそり近づいて会話を盗み聞きしていました(笑)。
神木:そういえば、僕の出演作を「参考にしたい」って言ってくれたよね?
上白石:そうなんです。テレビドラマの「11人もいる!」を観ました。神木さんの話し方から、自分のセリフへのインスピレーションがもらいたくて。
神木:たしかに「11人もいる!」は、ごく普通の高校生を演じたからね(笑)。
Q:長澤さんも、いつもの自分と違う声を意識したのですか?
神木:僕たちが高校生の役なので、ひときわ「大人の女性」らしい魅力的な声でした。
長澤:瀧の先輩という役柄で、大人っぽいセリフが多かったからじゃない? 今回は、これまでの声の演技とちょっとアプローチが違ったかもしれません。以前は自然体にこだわったけれど、声優さんの演技のように、いろいろトーンも変えたりしてみたんです。新海監督が書いたセリフって、けっこう含みがあって、想像力が広がりしました。
異性について改めて感じたこと
映画『君の名は。』は8月26日より全国公開
Q:神木さんと上白石さんは、「異性の声」を演じたことで、何か新たな発見は?
上白石:生まれてから、誰かに対して怒鳴ったことがなかったので、ちょっと新鮮でした。
長澤:それはそうだよね。
上白石:自分で「こんな声、出せるんだ」という発見はありましたね。男の人だから言える言葉や、男の人だから踏み込める場所を初体験した感じです。
長澤:神木くんは? 女子の気持ちがわかるようになったとか?
神木:女子の気持ちは今でも分かりません。『君の名は。』でも、三葉の心になった瀧がカフェでパンケーキの写真を興奮しながら撮るシーンがありますが、女子は、なぜあんなにすぐ写真を撮るんですか?
長澤:「かわいいー」って言いながら写真を撮るのは、女子の習性だからね(笑)。
上白石:私はそんなに撮らないけど……。
神木:目の前に現物があるのに、それを見ないでカメラばかり見ていますよね。その気持ちが、僕にはわからないです。ある意味、「男女の心が入れ替わった」典型的なシーンなのですが、やっぱり女子の気持ちは分かりません(笑)!
取材・文:斉藤博昭 写真:尾鷲陽介