振り回される恋愛はあり?なし?
映画『四月は君の嘘』は9月10日より全国公開
第37回講談社漫画賞に輝いた新川直司の人気コミックを実写映画化。広瀬すずふんする自由奔放なヴァイオリニストの宮園かをりと、山﨑賢人ふんする母の死を境にピアノが弾けなくなった天才ピアニストの有馬公生が、互いの才能を認め合い成長していく姿を切ない恋模様を交えて描く。タイトルの『四月は君の嘘』にちなみ広瀬と山﨑が恋と嘘について語った。
男性目線の純粋ラブストーリー
Q:かをりちゃんと公生くんの恋物語をどのように思いましたか?
広瀬すず(以下、広瀬): こんな純粋で切ないラブストーリーがあるんだ! って思いました。まっすぐな思いは心に響きますし、かわいらしい……けれど、切ない。
山﨑賢人(以下、山﨑):うん、切ないね。物語の進行は、かをりに振り回されている公生の目線で、青春ラブストーリーなのに男性目線は珍しいとも言われます。皆さんの感想が知りたいですね。
Q:かをりと公生の関係が変わっていくプロセスが、とても繊細に描かれていて魅力的でした。
広瀬:SNSではなくて、直接本人に告白するとか手紙で伝えるからこそ、恋のピュアさとか淡い感じが出たと思います。わたしはエネルギッシュなキャラクターの女の子を演じることが多いですが、その中でもかをりちゃんは飛び抜けて生命力にあふれていました。
山﨑:公生にとって、かをりは光のような存在なので、初めて出会ったときから、この人が自分を変えてくれるとかある種の直感を抱きました。その直感が確信に変わっていくのは、言葉を交わすことや実際に会ったときのやり取りですよね。存在そのものの大きさを意識していくようにしていました。
Q:実際に女性に主導権があったり、振り回されたりするのはどうですか?
山﨑:実は、女の子から「ちゃんとして」と言われてみたいです(笑)。ちょっぴり憧れるシチュエーションです。女の子リードの恋愛もありだと思います。振り回されるの、好きです(笑)。むしろ振り回されてみたいですね。相手の人が楽しいと思ってくれるなら、それに付き合いたいです。
広瀬:優しい!
山﨑:ついていくのって楽しそう。自分の知らない世界が待っていそう。すずは、どう?
広瀬:わたしはついていきたいタイプ! でも、かをりと公生の年齢だからこそ、女の子が男の子を振り回してもかわいいのかも(笑)。
あり?なし?嘘のいろいろ
Q:タイトルの中に「嘘」とありますが、本作の恋と嘘についてどう思いましたか?
山﨑:嘘って難しいですよね。嘘を発した当人の中での思い、その嘘をつかれた側の思いがそれぞれあるわけだから。公生も最後に「何で嘘をついたんだろう」「何で最初に言ってくれなかったんだろう」という疑問は感じたと思うんです。ただ、かをりとしては難しいところで、温かい嘘は……いいですよね。
広瀬:人を傷つける嘘は良くないですよね。誰も得をしない嘘ではなくて、何かしら意味のある嘘、例えばその人たちの関係性とか状況とかさまざまで、誰でも隠したいこと、誰かを思って言えないことってあると思います。劇中の嘘はもどかしいですけど、その嘘の理由を観た人は理解していただけると思います。
Q:本作ではお二人とも楽器演奏にも挑戦されましたよね。監督いわく山場の演奏シーンは「死にそうだった」そうですが?
広瀬&山﨑:(目を見合わせて)死んでいました!
山﨑:演奏シーンは3日間ずつガッツリと撮りましたから。
広瀬:半年かけて集中的に練習しました。これまで楽器を習ったことがなかったですし、ヴァイオリンはゼロからのスタートだったので本当に大変でした。
山﨑:狂いの無い正確なピアノを弾く人を演じなければならないので、半年間基本をしっかりと習いました。ピアノが弾けなくなっている背景を意識しつつ、演奏と感情の両方をしっかりと表現することは難しかったです。
お互いの「すごい」を明かす
Q:感情を表現されるシーンが印象的でした。
広瀬:監督は感情を優先してくださって、時間のない中で納得がいくまでやらせてくださったので、すごくうれしかったです。夜の学校のシーンの感情が自分ではしっくりこなくて、監督を交えて3人で話し合いました。それはセリフや動きのことではなくて、かをりとしては公生のことを見られる心境ではないと感じたんです。まず、そういうことをじっくり話して、それからカット割りを決めていく感じでした。
山﨑:監督は「まず、やってみて」とおっしゃって、そこから各シーンのテストをして、実際に相手役の方とやり取りから距離感やタイミングを調整しました。僕の場合は、自分の芝居が重く硬くなっていて、監督から「大丈夫、大丈夫。それは考え過ぎだよ」と言っていただき、一度力を抜こうと思えるようになりました。
Q:初共演の感想は?
山﨑:すずは、かをりと似ている部分があると思いました。明るくて天真爛漫(らんまん)で、ちょっとつかめない感じもあるんです。それに芝居をしているとき、すごくイキイキとして自由だと感じました。普段も自由ですけどね(笑)。
広瀬:それはお互いさまでしょ(笑)。
山﨑:自由なところで気が合ったんだよね?
広瀬:そう、波長がピピッと。お互い高校生を演じることが多いから、ちょっと似ている世界観とかある中で、全然違うものを持って現場に入って、発信していくのがすごい! と常に感じていました。
山﨑:お芝居のスタンスがすごくいいなあ、って。すずに会って感じたことは何か新しかったです。女優としてもそうですけど、人としても「スゲーやついる」って思いました。
広瀬:そういう賢人君は、「スーパースペシャル無敵系人類」だから! キラキラ感満載のさわやか王子。現場でもムードメーカーでいてくれたし、芝居の面でも支えてくれました。面白くてさわやかで優しくて。それにかわいく母性本能をくすぐる人です。
山﨑:お互いに「すごい」と思っているってことで(笑)。
取材・文:南樹里 写真:尾藤能暢