最初から最後までうまくいく恋愛より、先が見えない恋愛のほうが燃えるもの。恋愛映画にも、つい「どんでん返し」を求めてしまうこと、ありませんか? 三角関係や秘密の恋など、恋愛のプロセスがあるほうが、仕掛けられた「どんでん返し」にノックアウトされるというもの。そこで衝撃のラストが待つ恋愛映画を3本、紹介します!
1:80’sが散りばめられた『イニシエーション・ラブ』の、だ~いどんでん返し!
「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」
キャッチコピーでそう宣言されているにも関わらず、“その瞬間”に思わず「あっ!?」と声が出てしまうのが、『イニシエーション・ラブ』(2015)。 乾くるみ原作の人気小説を堤幸彦監督が映画化した本作は、1987年の静岡を舞台にした「Side-A」から始まります。カセットテープのA面とB面…、いまの若い子たちには馴染みがないかもしれませんが、カセットテープはA面を最後まで聞いたら、取りだして裏返さないとB面はアタマから聞けないんです(オートチェンジャー機能というのもできましたが……)。
そんな「懐かしい」カーステのシーンから始まるSide-Aの主人公、鈴木夕樹(森田甘路)は、女性経験もない、冴えないぽっちゃり系男子。ところが、人数合わせで参加した合コンでの「繭子」(前田敦子)との出会いが、彼を「君は1000%」な恋の力で変えていくのです。でも、「全てが覆る」前提ですから、不釣り合いな二人の恋の進展に、観ている私たちは“警戒その1”。急に「タック…ズボンのタック」と話し始めた繭子が、「夕樹」の「夕」がカタカナの「タ」みたいだからと、「たっくん」と呼び始める不自然さ……。
その二人が正式に交際を始め、「たっくん」が「痩せてカッコよくなる!」と努力宣言をしたところでSide-B。繭子と順調につきあっているたっくんが、テープチェンジと同時に松田翔太にヘンシン!? これもどんでん返しの一部なの……? と、“警戒その2”ながらも、映画のマジックにハマります。 こんなにカッコよくなって、静岡から東京に転勤になったたっくん、都会の絵の具に染まらないでねと心配する矢先、ワンレンでキメた東京のイイ女・美弥子(木村文乃)が現れます。ある出来事がたっくんの気持ちを決定づけ、繭子との遠距離恋愛は終了したかに見えましたが、いよいよラスト5分――。クリスマス・イブに「繭子が待ってるかも」と静岡へ車を走らせるたっくん。彼の視線の先、笑顔の繭子の前に現れたのは…?
このラスト5分ははっきり言ってホラーです(笑)。とはいえ、ラスト5分のために耐え忍んで観るという苦痛は感じられないのは、まず前田敦子が「昭和のブリッ子」がハマりすぎ! ポニーテールとルビーの指輪が似合いすぎ! そしてSide-Bのたっくんと美弥子の、食堂での会話のシーンなんて『男女7人夏物語』……! ブーツ型のビールグラスも! 特別出演の片岡鶴太郎と手塚理美、まんま『男女7人』! と、散りばめられた80’sのカケラ拾いにテンションが上がる作品でもあります。
2:原作を読み返したくなる! “妄想オチ”の無限ループ『東京大学物語』
まさかの“妄想オチ”で読者を唖然とさせた、人気漫画『東京大学物語』の実写版。原作者の江川達也自らが初監督を務めた本作では、原作でヒロインだった水野遥が主人公に設定されていて、原作の流れを汲んだ、江川監督らしい予測不可能な“オチ”が用意されています。
幼少時代から「変人」扱いされ、いじめられていた水野遥(三津谷葉子)は、函館南陽高校に進学すると「普通でいること」を心がけ、平凡な高校生活を送っていた。そんなある日、学年で成績トップの村上直樹(田中圭)に突然告白されて付き合うことに。そして、村上が東大を目指していることを知った遥は一緒に東大に行くために猛勉強し、見事合格。しかし、村上は試験前日に遥の友達と“ゆきずりの関係”になり、動揺して不合格に。その事実を村上から告げられた遥だったが、変わらぬ愛を誓い、過ちを受け入れました。そして、一念発起した村上は、“仮面浪人”として早稲田大学に通いながら遥のいる東大を再び目指します。
1年越しの試験当日。遥は合格祈願に雪山の神社に行くも、帰りに遭難してしまい、誰もいない小屋で瀕死の状態に。数日後、病院のベッドで目が覚めた遥。その横に立っていた友達から、村上が遥を助けに行って雪崩で死んだことを告げられます。しかし、それは……?
本作は幾重にも重なる“オチ”も去ることながら、原作を踏まえた濃厚なラブシーンも見どころ。映画初主演を務めた当時21歳の三津谷葉子は天真爛漫で可愛らしく、その雰囲気は現在の本田翼にそっくり!? 体当たり演技もたまりません。
3:再会した初恋の人の秘密に驚愕する『陽だまりの彼女』
この映画には、戦慄するブリッ子もゲスも出てきません!
「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」として話題になった越谷オサムの人気小説を、恋愛青春映画の名手・三木孝浩監督が2013年に映画化。松本潤と上野樹里主演のせつない恋愛映画です。 10年ぶりに再会した初恋の人には、不思議な秘密があった……。中学のとき、淡い想いを交わした真緒(上野樹里)と浩介(松本潤)。運命的な再会をした二人は幸せに暮らしますが、ある日、真緒は突然姿を消します。
じつは、彼女は、○○だったのです! 上記で紹介した2作とは違う種類の衝撃です。セリフや描写でわかりはするけど、上野樹里の目が離せないキュートさに翻弄され、気がつけばファンタジックな恋愛にハートをつかまれてしまいます。
ありえないことが起こっちゃう、でもそれこそ、私たちが“恋愛”に求めるものかも? 今回紹介した3本は、オチがわかっていても、何度も観返したくなるような作品ばかり。ぜひ楽しんでみては?
(文/三浦順子@H14)