10月15日より公開された『ダゲレオタイプの女』は、オールフランスロケ・外国人キャスト・全編フランス語の、黒沢清監督が海外初進出を果たした作品。現地スタッフやキャストは、日本の怪談にならったホラーとラブストーリーが融合する監督の脚本と世界観をすぐに理解したそうで、その過程を振り返った監督は「映画はやはり世界共通言語のようです」とのコメントを残しています。
これまでにも、日本人監督がオール海外キャスト、全編外国語で挑んだ作品はいくつか挙げられます。今回は、同作を含む“オール海外映画”をピックアップします。
『ダゲレオタイプの女』(10月15日公開・フランス・黒沢清監督)
世界最古の写真撮影方法ダゲレオタイプにこだわりながら、自殺した妻の亡霊に怯える写真家ステファン。その被写体として特殊な器具で拘束される娘マリー。ステファンの助手を務め、マリーを連れ出そうとする主人公のジャン。そんな3人が織りなす悲劇的なホラーロマンスです。構想は10年以上前からあり、「海外で一度撮ってみたい」という夢と合わせて叶った、黒沢監督念願の作品といえます。
『7500』(2014・アメリカ・清水崇監督)
『THE JUON/呪怨』が全米興行成績No.1を獲得した清水監督のハリウッド映画3作目。航空機の乗客の不可解な死がきっかけとなり、機内に呪いが広がっていくパニックホラーです。物語は航空機内のみで進行しますが、観る者を飽きさせない多様なカメラシーンの展開には、一軒家の中だけで恐怖を描いた『呪怨』シリーズの監督ならではの手腕が光っています。
『ガルム・ウォーズ』(2014・カナダ・押井守監督)
『機動警察パトレイバー』などで知られるアニメ界の鬼才・押井監督の、全編英語・カナダ撮影・欧米人キャストの実写映画。とある惑星のクローン戦士ガルムたちの部族争いと、聖地を目指す旅を描いた異世界ファンタジーです。もともと特撮+アニメ映画として2000年に公開予定だった企画が一端凍結し、約15年の時を経て実写+CG、そしてカナダロケという形で実現した大作。押井監督渾身の映像美が見ものです。
『ミッドナイト・ミート・トレイン』(2008・アメリカ・北村龍平監督)
『あずみ』の北村監督のハリウッドデビュー作。写真家レオンは、ある行方不明になった女性と撮った写真に写っていた、不審な男を追跡します。しかしその男は地下鉄内連続殺人犯で…。人気ホラー作家クライヴ・バーカーの小説を映画化し、頻出するグロテスクな描写をスタイリッシュな映像で仕上げた作品。北村監督は次回もハリウッドホラーに挑み、客船を舞台にした作品を現在制作中です。
『シークレット・チルドレン』(2014・アメリカ・中島央監督)
アメリカ在住の新進気鋭の中島監督。初監督作のラブストーリー『Lily』は、ヒューストン国際映画祭などで数々の賞を受賞しました。2作目の『シークレット・チルドレン』は近未来のクローンと人間の共存を描くSFヒューマンドラマ。構想時に東日本大震災が起こり、もっと命や生きていくことを描く映画を作るべきだ、と思い立って制作したそうです。完成披露舞台あいさつでは、今後は「世界中のマーケットで勝負できる作品を作りたい」と抱負を述べました。
9月開催のトークイベントで黒沢監督は、海外で活躍したい人へ向けて「こういう映画を作りたい、という欲望を磨いていけば、絶対に世界に通用する、と思います」とコメント。これからも、日本人監督によるオール海外映画は続々登場するのでしょうか?自国制作の「邦画」「洋画」とはまたひと味違う、異国同士の才能が調和した作品に出会えるのが楽しみですね。
(文/藤岡千夏@H14)
<作品情報>
『ダゲレオタイプの女』
10月15日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開!
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