第27回ホラー&ファンタジー映画祭のポスター
10月29日から11月4日まで開催されるスペインの第27回ホラー&ファンタジー映画祭で、複数の日本ホラー映画が特別上映されます。ジャパニーズホラーといえば『リング』、『呪怨』がハリウッドでリメイクされたのを機に、世界に広く知られるようになりました。一体どんな作品がフィーチャーされているのか、同映画祭の概要に加え、これまでの海外ネット民の声をピックアップしてご紹介。
地元人気の映画祭が日本色に染まる!
美食家や映画人が集まるスペインの都市サン・セバスチャン。64年の歴史をもつ有名な国際映画祭の1カ月半後に「ホラー&ファンタジー映画祭」が催されるのが恒例となっています。今季、日本側のコーディネーターを務めるのは、スペイン出身で日本在住の翻訳家ダニエル・アギラル氏。『シン・ゴジラ』でのフランス大使役など映画出演もこなし、日本映画に精通した映画研究家としても知られます。
アギラル氏によると、この映画祭は「ハロウィーンにあわせて開催される、地元で人気の高いイベント」で、今季は「オープニング作品『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督、『貞子VS伽耶子』の白石晃士監督など、6人の日本人映画監督が舞台挨拶のために招待され、日本ホラーを題材とした書籍も出版予定。これらはほとんど前例のないこと」とのことです。映画祭では怪獣映画などを含む計17本の日本映画が上映されます。
幽霊にサバイバル…多彩なホラー上映
「21世紀日本ホラー&ファンタジー映画」では、ホラー色の強い9本を公開。大ヒット作『呪怨』、『仄暗い水の底から』のほか、海外で高く評価された作品がラインアップされています。
たとえば、カンヌ国際映画祭への出品作も多く、フランスを中心にブレイクした黒沢清監督の『LOFT ロフト』。沼から引き揚げたミイラの呪いに苛まれるというサスペンスホラーです。『HAZE ヘイズ』は、タランティーノ監督など世界の著名監督に”塚本フリーク”なるファンをもつ、塚本晋也監督主演のスリラー。オールデジタルの映像で、身動きのとれない密室で生死をさまよう男の恐怖をあぶり出しています。
人々のゾンビ化した街で奮闘するサバイバルホラー『アイアムアヒーロー』、密室で男女9人が殺人ゲームを展開する『ゲームマスター』など、上映作のジャンルは実に多彩。『ゲームマスター』は、クラウドファウンディングで制作された珍しい作品です。
このほか、R-15指定の家族ドラマ『アンテナ』、妖怪時代劇『跋扈妖怪伝 牙吉』、異色の特撮『自傷戦士ダメージャー』など、カルトな人気を誇るホラー&ファンタジー映画が集結します。
「俺のベスト3は『呪怨』『オーディション』『リング』!」(ノルウェー)
スペインでの反応も楽しみですが、現代の日本ホラーは、これまで海外の人々にどのような反響を得ているのでしょうか?映画ファンの立てたスレッドをまとめた翻訳サイトには、日本ホラーのお気に入り作品を述べる声も多くみられます。今回の映画祭にもある『呪怨』や、海外でも認知度の高い『リング』は不動の人気を誇るいっぽう、サイコホラー『オーディション』には熱狂的な外国人ファンが多く存在。「怖過ぎて最後まで観れない…でも観たい」(クロアチア・韓国・グレナダ)といった声が続出しています。
また、日本ホラーには2000年代にも『口裂け女』や『テケテケ』など、都市伝説を題材にした作品が多いのも特徴。これらに対しては「創造性に富んでる」(アメリカ)、「日本の都市伝説や妖怪は大好き」(メキシコ・ドイツ・アイルランド)と、欧米諸国から絶賛の声が。
ホラー映画に対して見解を述べるスレッドには「アメリカホラーは先が読める感が強く直球的で、日本ホラーは奇妙で変化球的」(アメリカ)との見方も。土地特有の霊や人間の怨念をもとにした日本の話には、海外の人も予測不能な不気味さを感じているようです。
「日本映画がより知られるチャンスでもあり、日本でもぜひ話題となってほしいイベントです」とアギラル氏が語る、ホラー&ファンタジー映画祭。現地の人々をはじめ、世界中が日本ホラーの魅力に取り憑かれる機会となりそうです!
(文/藤岡千夏@H14)