企業のIT活用ガイド 水谷 哲也 / All About
働いている人はすべて確定申告が必要
まもなく確定申告シーズン。
※確定申告の受付は2017年2月16日(木)~2017年3月15日(水)となりますが、電子申告の場合は1月16日(月)から送信可能となります。
確定申告とは個人が1月1日~12月31日までの収入から支出と控除(住宅ローンなど)を差引き、所得を計算、税務署へ申告書を提出することです。これで2016年度の所得税額が確定します。
働いているすべての人、株式投資で儲けた、年金をもらったなど所得がある人は確定申告しなければなりません。働いているすべての人が対象ですが会社勤めの人は税務署へ行って申告する必要はありません。毎月、給与から自動的に所得税が天引きされる源泉徴収と年末調整によって経理部門が会社勤めの人のかわりに税務署へ確定申告してくれます。
源泉徴収制度はもともと戦争遂行財源を調達するために太平洋戦争の直前に導入されました。戦後、GHQ(連合国総司令部)から「年末調整ではなく、納税者みずからが税務署に確定申告をすることこそ、民主主義の基礎である」と源泉徴収制度をやめるよう勧告がありました。
税務署にとっては徴税コストがかからず、企業がかわって徴税してくれるため、勧告はうけいれられず現在も続いています。結果、自分が払っている税金の額をよくわかっていないビジネスマンが多く、政治参加意識が希薄になる原因のひとつと言われています。
源泉徴収していても確定申告が必要な人
会社勤めしていていても自分で確定申告しないといけない場合があります。
・2000万円を超える給与をもらっている人
・2ケ所以上から給与をもらっている人
・給与以外に年間20万円を超える所得がある人
給与以外に年間20万円を超える所得がある人は兼業農家が多かったのですが、最近増えているのが週末起業。副収入が増え、軌道にのってから独立を考えるビジネスマンです。ただ確定申告すると、副業していることが会社にばれてしまいます。
副業が会社にばれないようにするには自分で納付
確定申告書に「給与所得以外の住民税の徴収方法の選択」という枠があり「自分で納付(普通徴収)」欄にチェックをいれると副業で稼いだ分の住民税は自分で直接納税となります。基本的に会社にばれることはありません。
また不動産、株式投資、FXなどで年間20万円を超える所得がある場合も申告しなければなりません。反対に損をした時も確定申告をしておきましょう。損失を次年度以降に繰越することができ、翌年、儲かった場合に損失と相殺し、所得税を少なくできます。
※マイナンバー制度が本格的にスタートしましたので、税務署ではマイナンバーで簡単に名寄せし捕捉しやすくなります。
・医療費、住宅ローンなど控除がある人
家やマンションを買った場合は住宅ローン控除がうけられますので最初の年に確定申告をします。また医療費が10万円を超える場合や、生命保険料控除などを年末調整で控除し忘れていた場合などは確定申告をします。確定申告をしなかったり忘れていたりすると無申告加算税、延滞税、重加算税などが加算し追徴課税されますので、ご注意を。
上記のような例や年金以外で基本的に確定申告が必要なのは町の商店主など事業所得がある個人事業主になります。会社の社長はビジネスマンと同様、役員報酬を源泉徴収していますので確定申告は必要ありません。ただし2社以上を経営している場合や会社以外に不動産所得などがある場合には確定申告が必要です。
青色申告、白色申告
確定申告には白色申告と青色申告があります。白色申告には記帳義務はなくエクセルなどで収入や経費を計算して申告します。
青色申告は複式簿記にもとづいて帳簿を記載し、記帳から正しい所得や所得税を計算し申告することです。
GHQが源泉徴収制度をなくすように勧告しましたが、べつに青色申告制度をおこなうよう勧告がありました。記帳にもとづいて正確に所得や税額の申告をする納税者には、インセンティブとして種々の特典をあたえるという制度で、日本人にとって青色は「青空のようにすっきりした色」のイメージから青色申告という名前になりました。
青色申告の特典
青色申告すると所得金額から最高65万円の控除ができます。所得金額が減るので所得税がお得になります。
また青色申告は赤字を繰りこすことができます。事業をはじめても最初はなかなかうまくいきません。1年目に赤字(損失)がでた場合、赤字を申告しておくと翌年以後3年間にわたって、所得金額から赤字分を差し引くことができます。2年目、3年目に事業が軌道にのり儲かりだしたとき、損失分だけ所得税を下げることができます。
65万円控除や赤字の繰り越しは青色申告だけで白色申告ではできません。また白色申告で所得の合計額が300万円を超えると、記帳と帳簿書類の保存が、2014年1月から必要になっていますので、実質的に青色申告と変わりません。特典が多い、青色申告にした方がお得です。
次は「青色申告ですが、明日からすぐにとはいきません」
青色申告ですが、明日からすぐにとはいきません
青色申告するには、事前に承認が必要で、すぐに青色申告というわけにはいきません。事業を行っている所轄税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
提出する時期は決まっていて
・開業日から2ケ月以内(1月1日~1月15日までに開業した場合は、その年の3月15日まで)
3月末に退職し、4月1日に開業したなら6月末までに税務署へ申請書を出し、帳簿は4月1日からつけます。1月~3月は給与所得がありますので、確定申告で給与・退職所得と事業所得をあわせて青色申告します。
今まで白色申告で申告していたのを青色申告に変更する場合は、青色申告に切りかえたい年の3月15日までに申請します。切りかえた年の1月分から帳簿をつけ、1年分をまとめて翌年の確定申告で青色申告をします。
→ 青色申告 ドンブリ勘定から脱却
青色申告ソフトの選び方
紙で帳簿をつけなくても青色申告ソフトを使えば、青色申告書の作成までできてしまいます。毎月の取引数が少ない事業であれば、エクセルでもかまいませんが経費を通信費、事務用品など勘定科目ごとに自分で集計する必要があるので青色申告ソフトを使った方が楽でしょう。
事業をおこなっていくには数字がよめないといけませんので日商簿記3級程度の仕訳や勘定科目の知識が前提となります。
やよいの青色申告
弥生の青色申告用ソフト。仕訳が分からなくても簡単取引入力を使うと、ナビゲーションに従って仕訳を入力できます。仕訳がよく分かっている人は仕訳日記帳を使いますが、初心者向けになっているため、やや丁寧すぎるところはあります。
みんなの青色申告
ソリマチの青色申告用ソフト。仕訳が分からなくても「らくらく仕訳入力」を使うと簡単に仕訳を入力できます。
freee(フリー)
クラウド型会計ソフト。銀行口座やクレジットカードを登録すると自動で仕訳し会計帳簿を作成してくれます。ただし全ての銀行ではなく地銀などの一部は対応していないところもあります。
確定申告が終わったら帳簿類を印刷して7年間保存
データのバックアップはもちろん必要ですが、確定申告が終わったら各帳簿(総勘定元帳、仕訳帳など)は印刷して保存しておきましょう。帳簿類や領収書などはその事業年度の確定申告書の提出期限から7年間保存しなければなりません。
2016年度確定申告書の帳簿書類は2023年末まで保存する必要があります。クリアファイルに領収書や確定申告の書類などをまとめ「2016年度確定申告資料 保存:2023年 年末」とテプラーなどで廃棄期間を書いて貼っておくのがおすすめです。
PCAから「青色申告じまん2」という青色申告用ソフトが出ていましたが2011年9月末で販売終了、サービスも終了になってしまいました。こうなるとデータのバックアップをしておいてもソフトが動かなくなりますのでバックアップは意味がありません。やはり各帳簿は印刷して保存しておきましょう。
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