(c)2016「バースデーカード」製作委員会
NHK朝ドラ「あまちゃん」に出演していた女優陣の出演映画が立て続けに公開となっています。10月15日に有村架純がヒロインを演じる『何者』が公開、22日に橋本愛の『バースデーカード』、そして11月12日に能年玲奈の『この世界の片隅に』が公開。それぞれ各方面で話題となっている話題作ですが、なんといっても注目は“ヒロイン対決”ではないでしょうか。
「あまちゃん」一の大ブレイク・有村架純
朝井リョウ原作の小説を映画化した『何者』は、就職活動を通して自分が何者であるかを模索する若者たちの姿を描いた作品。大学生である主人公たち5人は、それぞれの思いや悩みをSNSに吐き出しながら就職活動に励みますが、人間関係は徐々に変化していきます。この先の人生を決めなくてはならない重要な時期を戦う登場人物たちに共感する人が続出している映画です。有村は劇中で、田名部瑞月という女子大生を演じています。佐藤健演じる主人公、二宮拓人の片思いの相手で、菅田将暉演じる神谷光太郎の元彼女という役どころ。登場人物の中ではどちらかというと聞き役ではありますが、「あまちゃん」以降のブレイクっぷりがわかる堂々の豪華キャストの一員です。
「あまちゃん」を機に人気女優となった有村ですが、実は「あまちゃん」では当初出番はあまり多くなかったそう。それが、放送中に人気が急上昇し、急遽ラストにも出演することになったという逸話の持ち主です。その後もフジテレビ系月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」主演やCMで活躍するほか、2016年だけでも、『僕だけがいない街』、『アイアムアヒーロー』、『夏美のホタル』、『何者』など、複数の出演映画が公開されます。「あまちゃん」でブレイクした女優の中で、松岡茉優と並び最も目覚ましい活躍をしている一人です。
映画で培われる演技のキャリア・橋本愛
亡き母から毎年届く誕生日カードに励まされながら人生を歩んでいく少女の成長を描いた映画『バースデーカード』。橋本は劇中で、内気な少女、鈴木紀子を演じています。紀子が10歳のある日、宮崎あおい演じる母・芳恵は病気でこの世を去ってしまいます。自分の死期を悟った芳恵は、子どもたちが20歳になるまで毎年バースデーカードを贈る約束をしていました。その約束どおり、紀子たちのもとには毎年、母からの手紙が届くようになります。そして20歳を迎えた最後の手紙には、紀子が10年前に母に投げかけた質問への答えが記されていたのです。10代から25歳まで、成長し変化する紀子を橋本は見事に演じきりました。
橋本は2010年の映画『告白』や2012年の『桐島、部活やめるってよ』など「あまちゃん」以前からすでに注目されていましたが、「あまちゃん」でさらに人気が上昇します。ただ、橋本は独特のオーラをまとった“我が道を行く”タイプ。あまちゃん後も映画を中心に女優活動を精力的にこなしていますが、ブームに乗った売り出し方はしていません。それでも2016年公開の『シェル・コレクター』や『バースデーカード』、そして2017年公開予定の『美しい星』など、活躍の場が多くなってきました。着実にキャリアを積んでいるといえるでしょう。
そろそろ改名にも慣れてきた?のん
『この世界の片隅に』は、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したこうの史代による漫画が原作のアニメーション映画です。第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きようとするヒロインと、彼女を取り巻く人々の日常を生き生きと描いていており、能年はヒロイン北條すずの声を担当しています。同作品は東京国際映画祭の特別招待作品で、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコなど14カ国での公開が決定しています。
『あまちゃん』で一躍国民的アイドル女優となり、2014年には映画『ホットロード』や『海月姫』で主役を務めまた能年ですが、所属事務所からの独立が噂されるようになってからは、独特なテイストのブログ以外に目立った活動はありませんでした。16年7月には芸名を「のん」に改名したと発表し話題となりましたが、現在も事務所との話し合いは決着がついていないようです。改名を機に少しずつ露出は増えたものの、事実上活動休止状態だった時期に他の若手女優たちとついてしまった差を今後どう縮めるかが注目されています。ただ、その透き通るようなキャラクターで多くの人を魅了したのは紛れもない事実。『この世界の片隅に』で再評価される可能性は十分あります。
三者三様、それぞれ個性的な道を歩んでいる3人ですが、「あまちゃん」が大きな作品だっただけにこれからも比較されてしまうでしょう。今度は、どんな再共演を果たすのかが気になるところです。
(文/竹内琴子@HEW)