今季からマンCを率いるグアルディオラ監督 写真は2016年7月8日(Getty Images)
マンチェスターCで“ペップ革命”が進行している。ペップ・グアルディオラ新監督は十中八九、新天地でも後方から丁寧にパスを繋ぐ、ポゼッションをベースとしたサッカーを展開するだろう。
■ペップのサッカーとは
グアルディオラ監督のサッカーとは、GKを含めた最終ラインからビルドアップを開始し、数的優位を創りだして相手を崩し、前線に良い形でラストパス(クロス)を供給することに主眼が置かれている。守備では、ボールロスト直後の激しいプレスによる即時奪還が鉄則だ。
ファイナルサードでの崩しは選手の特徴によって変わるものの、コンセプトは揺るがない。カウンターは選択肢の1つではあっても、「速く攻めれば、その分速い逆襲を受ける」と話すように、戦術の柱に据えることはない。
■不安要素は3つ
では、プレミアリーグでそれは実現可能か。3つの不安要素があると筆者は考える。
まずは、肝心の選手が戦術についていけるかだ。欧州他国に比べ戦術的にやや大味なところがある英国では、そもそもゆっくりとパスを回す文化が根付いておらず、成長過程でそういったスタイルを経験していない選手も多い。2009年から13年までマンCを率いたロベルト・マンチーニ監督も「3バックのやり方すら知らない」と、戦術理解度の低さを嘆いていた。
イルカイ・ギュンドアン、リロイ・ザネらを加え、フェルナンジーニョの最終ライン起用など手は打っている。しかし、複雑なポジションチェンジや、神経質なまでのディティールへの追及に選手が応えられるかは、未知数だ。
次に気になるのはボディコンタクト。プレミアでは激しい当たりが許容され、レフェリーが反則を流す傾向が強い。後方で相手のファウルまがいのプレーでボールを失ってカウンターを浴び、リズムを掴めない展開もあるのではないだろうか。徹底的な空中戦を仕掛けてくる相手もいるかもしれない。
3つ目は対戦相手との力関係。グアルディオラ監督がこれまで率いたバルセロナとバイエルンはリーグにおける絶対的強者であり、そもそも実力が拮抗したチームが1つ(あるいはゼロ)しか存在しなかった。しかし、プレミアでは2~3チーム、マンCに対抗し得るチームがあり、第2集団や中堅チームも難敵揃いだ。最初から引いてボールを明け渡してくれるとは思えない。
以上の3点を踏まえると、“ペップ革命”は一筋縄では進行しないと考えられる。マンCは前任者のマヌエル・ペリェグリーニ監督が放任主義的だったこともあり、スター選手が即興的にプレーしている印象が強い。グアルディオラ監督の哲学を落とし込むまでには、それなりの時間が必要だろう。
とはいえ、三冠を達成したチームを瞬く間に変貌させ3度のブンデスリーガ王者に輝いたバイエルン時代の様に、杞憂に終わるかもしれない。蓋を開けてみれば圧倒的だった、そんな展開になる可能性も否定はできない。イングランドに馴染みのないスタイルとは、裏を返せば対戦相手にとっても対策が困難だからだ。マンCの“ペップ革命”は吉と出るか凶と出るか。まずは、お手並み拝見だ。