(C)2016「君の名は。」製作委員会
2016年の年間映画興行収入ランキングでダントツ1位になったのはもちろん、歴代邦画興収ランキングでもすでに2位を記録している映画『君の名は。』。映画の当たり年だった2016年にあっても話題を独占するほどの、社会現象ともいえるヒットを飛ばした作品だけに、同作には様々な批評が寄せられたのも事実です。そんな批判に対し、新海誠監督が自らの口で反論しました。
「そりゃ100億超える映画になるよ」
『君の名は。』の魅力はみなさんもうさんざん耳にしてきたでしょう。一方で、売れまくったからこそ寄せられる、斜に構えた意見もあります。曰く、「売れ線」だの「キャッチーな要素を詰め込んだだけ」だのといった批判です。同業者ともいえる漫画家の江川達也が、テレビ番組で『君の名は。』について「丁寧に売れる要素をぶち込んでいて、これ売れるなとは思いました。でもプロから見ると全然面白くないんですよ。作り手から見ると、作家性が薄くて、売れる要素ばかりぶち込んでいる、ちょっと軽いライトな作品」だと酷評したこともありました。
新海監督は12月18日放送のラジオ番組「道上洋三の健康道場」に出演。自身の作品についての質問に答える中で“一番嫌だった反響”について言及しました。新海監督は「『新海が作家性を捨ててヒット作を作った』とか、『商業に魂を売ってヒットにつながった』とか、『ありがちなモチーフの組み合わせだけで、そりゃヒットするよ』とか、『こんなキャッチーなモチーフだけだったら、そりゃ100億超える映画になる』みたいな言われ方はたくさんされました」と、心ない批判が多く寄せられたことを明かします。
もがいてもがいてもがいてきた
新海監督は、「その通りなのかもしれないなと思うのと同時に、そんなに容易なことならば、みなさん、やってみればいいんじゃないかなと思う」と反論。「僕たちも狙ったわけではなく、結果的にこういう数字になった」と前置きしたうえで、いずれにしても「売ろうと思って作れば売れるわけではないですよね。それは大変困難なこと」と、“売れると売れ線狙いだと批判を浴びる風潮”に苦言を呈しました。
さらに、「僕たちも2年間、本当にもがいてもがいてもがいてきたわけなので。『キャッチーな要素の積み重ねだよね』と言われると、多少腹が立ちますよね」と穏やかな口調ながら憤りを露わにしています。
売れるのは悪いことなのか?
確かに、男女が入れ替わるファンタジーはこれまでもありますし、夢というモチーフの使われ方もよく見るといえば見るものでしょう。なにより、タイトルからして過去のドラマや映画へのオマージュにあふれています。だからといって、それが「商業主義に魂を売った」ということに繋がるというのはあまりにも安直。誰にでもいえる、中身のない批判です。
新海監督が心を傷めずとも、ほとんどの人はそれが単なるやっかみの類だということはわかっています。まあ、それもこれも新海監督があまりにも多くの人の心を動かす作品を作ってしまったから起きたこと。そんな批判も含めて、『君の名は。』は日本の映画史に残る金字塔を打ち立てたということでしょう。
(文/大木信景@HEW)