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あの悪童は今…それぞれの道を選んだ元イタリア代表戦士たち|コラミィ× スポーツ

    (Getty Images)(getty Images)

     「やればできるのに…」「実力は折り紙つきだが…」。誰もがそのポテンシャルを認めながらも、サッカーに取り組む姿勢が妨げとなり、才能を開花できずにくすぶる“悪童”たち。この夏、カルチョの国イタリアが抱える3人のバッドボーイが、それぞれの道を歩み始めた。

     悪童や問題児という言葉から真っ先に連想されるのが、マリオ・バロテッリだろう。EURO2012でドイツを沈めた2得点は圧巻で、誰しもが将来のイタリアをしょって立つ存在になると考えた。しかし、そんな周囲の期待をよそに喫煙やスピード違反などを繰り返し、2014年4月以降、リーグ戦でわずか2得点と鳴かず飛ばず。リヴァプールのユルゲン・クロップ監督の構想からは完全に外れ、夏の移籍市場デッドラインにニースへの移籍が決定。都落ちと言って差し支えないだろう。

     とはいえ、今のバロテッリに最も必要なのは、サッカーと真摯に向き合うこと。フランス南東部に本拠を構えるニースは、クラブの格や注目度、歴史どれをとってもリヴァプールやミランとは比較にならないが、落ち着いて仕事に取り組める環境が、プラスに働くかもしれない。実際、リーグ1初出場となった第4節マルセイユ戦で、いきなり2ゴール。「やっぱり、やればできるじゃん」と思わせるには、十分なデビューだった。まだ26歳、再起に期待したい。

     一方で、クラブから不要と宣言されながら、頑なに移籍も契約解除も断ったのがアントニオ・カッサーノだ。サンプドリアのマルコ・ジャンパオロ新監督の構想外となった“ファンタジスタ”は、移籍の勧めを頑として受け入れなかった。契約解除にも応じず、奥さんの故郷ジェノバで残る1年の契約をまっとうしてサラリーを受け取る道を選んだという。

     『ガゼッタ・デッロ・スポルト』などによれば、マッシモ・フェレーロ会長との関係はもはや修復不可能で、すでにクラブ公式HPからカッサーノのプロフィール写真は削除された。ローマ時代にフランチェスコ・トッティとの名コンビで一世を風靡した悪童も34歳。天才的なテクニックとビジョンより、トラブルメーカーとしての印象を強く残してキャリアを終わらせてしまうのは、あまりに惜しい。10kgのダイエットに成功してブラジルW杯のメンバーに滑り込んだ情熱を見せ、もう一花咲かせてほしいものだ。

     そして、サッカー選手としてのキャリアに自らピリオドを打ったのが、パブロ・ダニエル・オズヴァルド。アッズーリの10番を背負ったこともある実力者だが、瞬間湯沸かし器のような性格が災いし、行く先々でトラブルが絶えなかった。ラフプレーや、チームメイト、指揮官との対立にとどまらず、ティフォージ(サポーター)とも揉めた。今年5月には、「プロらしからぬ振る舞い」により、故郷アルゼンチンのボカ・ジュニオルスを解雇されている。

     『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によれば、オズヴァルドにはイタリアのプロヴィンチャや、外国のクラブからオファーが届いていたが、そのすべてを拒否。大きな愛情を注ぐ、音楽の道へ進む決断を下したという。30歳という節目の年に、活躍のステージを移した“札付き”に幸あれ。

     手のかかる子ほど可愛いとはよく言われるが、これはサッカー界にも当てはまるかもしれない。「やればできるのに…」と歯がゆい思いをさせられる選手が実際にその実力を見せたとき、我々は普段とは少し異なる(そして、大抵の場合普段より少し大きな)喜びを感じるものだ。バロテッリに2発を決められて敗れたマルセイユのバフェティンビ・ゴミスも、「実は少しうれしく思っている」と、悪童の活躍を喜んでいた。ときに味方を敵に回し、ときに敵すらも魅了してしまう。そんな不思議な魅力を、彼らは持っているようだ。