J3大分片野坂スタイルの真髄 キーワードは「技術」と「自信」|コラミィ× スポーツ

ラストスパートに向けて最高のスタートを切ったJ3大分トリニータは自信を深めている。「ボールを簡単に相手に渡さない」という指針を掲げてスタートした片野坂体制は、ここまで13勝3 分6敗で2位(9/20現在)と一定の成果を挙げている。ここ数試合は試合内容も向上しており、特にポゼッションの質は顕著だ。

これまで失敗を恐れチャレンジしなかった選手が多かったが、意識改革が奏功したからに他ならない。その背景には片野坂知宏監督の頑固なまでの信念があったからだ。鹿児島実業高時代、センターバックやボランチの選手としてプレーした指揮官は、縦に長いボールを入れる同校のスタイルのなかにあって異質だった。

高校時代に同級生としてピッチに立ったことのある大分FC営業部の内野良純シニアマネージャーは振り返る。

「周りが大きくクリアしていたのに、アイツ(片野坂監督)は頑にボールをつないで自分たちが主導権を握ろうとすることを考えていた。監督に『簡単にプレーしろ』と強い口調で言われても、「チャレンジしなければ進歩しない」と言っていた。ボールを奪われ失点につながったこともあったが、その度に「技術を上げなければいけない」と練習に打ち込んでいた」

高校当時から片野坂監督のサッカー観にブレはない。指揮官が「ボールをにぎる」といった独自の表現で、相手がボールに奪いにきたときに、相手をひっくり返すような意図のある動かし方、相手の逆を取る重要性を説いてきた。その成果がパスワークの向上に結びついている。

とはいえ、指揮官本人は現時点でのパフォーマンスに満足していない。「選手たちは相手の穴が見えるようになった」と意図の浸透に手応えを感じているが、フィニッシュの局面でミスが気になるようだ。「技術があっても自信を持って表現することができない」ためにミスを繰り返すのだと言う。

技術を上げ、自信を持ってプレーさせる。この大枠のなかで進む片野坂改革が、トリニータの総合力を上げているのは間違いない。残る課題は最後の局面。フィニッシュの精度という普遍のテーマを気鋭の1年目監督がどう解決していくのか。非常に興味深い。

【柚野真也(trinita eye)】ゆの しんや。1974年、大分県大分市生まれ。大学卒業後、専門紙の記者として活動。その後、フリーランスのライターとして活動を開始。JリーグからFリーグ、バスケットボールのbjリーグなど、九州のスポーツシーンを数多く取材。「週刊サッカーダイジェスト」、「J2マガジン」「九州Jパーク」などサッカー専門媒体や、朝日新聞大分頁で毎週土曜にスポーツコラムなど執筆している。