ブルボンヌの新作映画批評 第12回『オデッセイ』 火星でディスコ・クラシック! 一番楽しい宇宙ぼっちサバイバル|dメニュー映画×コラミィ

オデッセイ

37年前、リドリー・スコット監督2作目にして世界的大ヒットシリーズの始まりとなった『エイリアン』のコピーは、「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。」だったわ。やっぱり宇宙ってのは孤独の象徴なのね……。2013年の『ゼロ・グラビティ』、2014年の『インターステラ―』、そして2015年(日本公開2016年)の『オデッセイ』と、まさに「宇宙でぼっち」なサバイバル大作が3年連続で公開。しかも3作ともが実によくできているというフィーバー状態ですよ。これだけ毎年、宇宙ぼっち体験をシミュレーションさせてもらえると、オカマの老後の孤独に向き合う際にも、ちょっと勇気をもらえるんじゃないかと思うわけ(ほんとシャレになんない)。

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さて、3作ともよくできていると簡単に言ったものの、その中身は三者三様。ミニマルな芸術作品とも言うべき『ゼロ・グラビティ』に、宇宙とスピリチュアルがつながった神話のような『インターステラ―』、それぞれ一般人を突き放すレベルの美術と哲学を、メジャー大作として成立させたあっぱれなプロダクトでした。そんな中でこの『オデッセイ』はまさしく「娯楽」そのもの。わかりやすいし明るいし前向きだし、よくできたエンターテイメント映画として、普段映画を観ない方にもオススメできる内容になってます。

なにしろ、「とにかく明るい」んで、ファミリーやデート向けとしても安心してください。でも、さすがにエイリアンに襲われる怖さはないものの、火星に一人よ?食料も水も足りないのよ?アタシなら初日で発狂レベル。見捨てたやつらへの恨みつらみをレコーダにありったけ記録して「ぎゃーっ!」って叫んで火星を全裸で走って昇天しかねない絶望的状況だもの。なのに、主人公はギャグなんてかましながら必死に生きるためのわずかな可能性を探すの。普通なら違和感を覚えかねない軽さだけど、昔から大好きなマット・デイモンたんが演じると、なんだか納得しちゃうのよね。ジミーちゃん顔でもハリウッド第一線にい続けられる、実力ある人格者のマットなら奇跡を起こせるはず!(現実と設定がごっちゃになってる)

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そして、落ち込みすぎない主人公のキャラクター以上に、この作品を明るくしてくれているのがサントラね!知らずにマットを火星に残してしまった女指揮官の置き土産として、「最悪な音楽のシュミ」と言われる私物音源が劇中多用されてるんですけど、これがなんとディスコ・クラシック! そうです、年増のオネエさん狂喜のジャンルでございます。しかもその使い方も完全にストーリーとシンクロしまくり。セルマ・ヒルストン『Don’t Leave Me This Way』(私を置いていかないで)から始まって、「あきらめずにジャガイモを栽培して食料確保するぞ」と奮闘すれば、グロリア・ゲイナーの『I Will Survive』(生き残ってやる!)。マットたんのセクシーボディとともにドナ・サマー『Hot Stuff』(熱いモノ)、NASAの救出活動ではデヴィット・ボウイ『Starman』(宇宙の男)、とタイトルや歌詞もドンピシャ。ゴールデングローブ作品賞をミュージカル・コメディ部門で受賞したってのは、こういうことだったのねー。

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ほかにもABBAなど、世界共通のゲイ・アンセムてんこ盛りなので、試写室で踊りだしたい気持ちを抑えるのに必死でしたよ(迷惑オネエ)。ちなみにデヴィット・ボウイに関しては、ファン人気ももっと高くてまんま火星って言ってる『Life On Mars?』って曲があるんですけど、こちらは暗めだからか不採用だった様子。(残念に思った方は、『アメリカンホラーストーリー 怪奇劇場』でのジェシカ・ラングばあさんカバーバージョンをどうぞ)

宇宙サバイバルの3作目は、リドリー・スコット監督による、恐怖でもサイバーパンクでもなく、意外にも明るいミュージカル風大作でした。観終わった後の気分も晴れ晴れな、娯楽映画の優等生よ!

この記事で紹介している作品

オデッセイ

2016年2月5日(金) TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
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