DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)旋風が、吹き止みません。NHK連続テレビ小説『あさが来た』で演じる五代友厚が死亡すれば「五代ロス」なる現象が起き、2月22日に同作品で再登場が決まれば、数週間前からニュースになる…。連日のように芸能記事になるその扱いを見ると、社会現象と言っても差支えないでしょう。
でもこれ、冷静に考えると、「何でこんなに盛り上がってるんだろう」と思いませんか? 確かに、180センチの長身に、抜群のスタイルとシルエット。今流行の塩顔イケメン的な風貌もいい感じです。しかし、35歳で実は妻子持ち。カッコいいけれども、同じ既婚者ならば、福山雅治や西島秀俊もいるわけだし、そんなに持ち上げるほどか?と思ってしまいます。
そう考えると、やはり彼の爆発的人気を支えているのは、“逆輸入俳優”という要素も少なからず関係していそうです。海外の映画に出演していた実績、様々な言語を話せる知的さ、日本での活動歴の少なさによる不明瞭な素性、そこから生まれるミステリアス感…。それら全てが綯い交ぜになって、彼の魅力を形成しているのではないでしょうか。
とは言え、彼が所属している事務所は、アミューズ。その昔キャンディーズを伝説のアイドルに仕立て上げ、サザンや福山を「20年以上売れ続けるコンテンツ」に育成した、敏腕プロモーター・大里洋吉が代表を務める芸能プロです。当然、彼のDNAを受け継いだ、百戦錬磨の芸能マーケターたちが、戦略立てて売り込んでいる結果ではあるのでしょう。しかし、それでも逆輸入俳優という素材がなければ、ここまでのムーブメントにはなっていなかったはずです。
■台湾・香港映画のスターだった金城武
もちろん、このようなカタチで日本の芸能市場に参入したのは、ディーン・フジオカだけではありません。例えば、最近あまり観なくなりましたが、金城武なんかも同じ部類に入ります。日本人の父と台湾人の母を持ち、台湾で生まれ育った彼は、高校生のときにスカウトされたのをきっかけに、芸能界に足を踏み入れます。
20歳で銀幕デビューを飾り、そこから台湾・香港映画に多数出演。主演を務めたものも何本かあります。そんな金城が、一躍日本で知名度を上げた作品が、1998年のフジテレビのドラマ『神様、もう少しだけ』です。この国際派俳優の役柄は、HIVに感染した女子高生と恋に落ちる音楽プロデューサー。その悲劇的なストーリー展開に、当時、日本中が涙しました。ちなみに、この時ヒロインを務めたのは、今クールのTBSドラマ『ダメな私に恋してください』でディーンとも共演している深田恭子。彼女は逆輸入俳優と相性が良いのでしょうか?
その後、日本でも何本かの映画・ドラマ・CMに出演した金城ですが、現在は中国や香港に活動の拠点を移しているようです。決して売れなくなったわけでないのは、『世界で最もハンサムな顔100人』に毎年ランクインしているところからも、推し量ることが出来るでしょう。
■体当たりの演技でアカデミー助演女優賞にノミネートされた菊池凛子
金城が国外→日本→海外というキャリアを歩んだのに対し、日本→国外→日本という進路を進んだのが菊池凜子です。もともとは15歳のときに原宿でスカウトされ、モデルとしてデビューしていた菊池。いくつかの映画出演を経た後、彼女の評価を決定的なものにしたのが、ブラッド・ピット主演のアメリカ映画『バベル』への出演です。ここで彼女は聾唖の女子高生を演じ、大胆なヌードシーンも披露。その女優魂を感じさせる熱演は現地で高く評価され、アカデミー助演女優賞を含む、複数の映画賞にノミネートされました。この実績を買われて、そこから日本で話題の映画・ドラマに多数出演していった彼女。日本で全く無名のところからアメリカで脚光を浴びるという、珍しいキャリアを歩んだ一人です。
■女優実績ゼロから、ヒュー・ジャックマンのパートナーとなった福島リラ
最近、脚光を浴びた日本人俳優といえば、福島リラでしょう。彼女のキャリアも実にユニークです。何せ、女優デビュー作がハリウッド映画。しかも、『ウルヴァリン:SAMURAI』で、ヒュー・ジャックマン演じるローガン=ウルヴァリンの相棒ユキオ役に、いきなり抜擢されたのだから驚きです。
女優としての実績はゼロであるものの、モデルとしての経歴は実に華やかな福島。2003年に渡米して以降、国内外のファッション雑誌やファッションショーなどで活躍。2004年には、ドルチェ&ガッバーナの春夏キャンペーンモデルとしても活動しています。2010年ごろから女優の勉強をはじめたそうなのですが、その努力の成果が早々に実ったということでしょうか。『ウルヴァリン:SAMURAI』公開後、2014年には大河ドラマ『軍師官兵衛』に出演するなど日本進出も果たしている彼女。今後テレビや邦画で観る機会も多くなりそうな、今、注目の女優です。
いかがでしたでしょうか?ディーン・フジオカ以外にも、様々な“逆輸入俳優”がいると分かりますよね。ここに上げた役者たちを見ても、そのキャリアは実に様々。果たして、ディーンはこのまま日本と海外両方で活動するのか?それとも、金城武のように国外に自分の拠点を戻してしまうのか? 今後の動向に熱視線が集まります。
●文 ロックスター小島