ローマ一筋を貫くFWトッティ 写真は2016年04月20日(Getty Images)
直近4試合で3得点。フランチェスコ・トッティが好調だ。今季は指揮官とひと悶着あったが、愛するクラブで生き残る最良の、そして恐らく唯一である道を見つけたのではないか。
ローマ一筋23年の大ベテランは2月、負傷が癒えたにも関わらず出場機会のない状況への不満をメディアを通じて吐露し、ルチアーノ・スパレッティ監督の怒りを買った。ジェイムズ・パロッタ会長が指揮官側に回ったこともあり、シーズン終了後の移籍も取り沙汰されている。
それでも、セリエA第32節ボローニャ戦で同点ゴールをアシストすると、続くアタランタ戦では自ら同点弾を記録。さらに、第34節トリノ戦では1-2で迎えた86分から途中出場し、3分間で2ゴール。“トッティ劇場”で逆転勝利に導いた。そして今週のナポリ戦では、絶妙な浮き球のパスで決勝点を演出し、相手の優勝の夢を打ち砕いている。
生き残りへのヒント
特筆すべきは、いずれも途中出場で決定的な仕事をやってのけたことだ。
ここに、今後へのヒントが隠されているのでないか。ローマの王子様も、9月に40歳になる。フィジカルの衰えは隠せず、故障も少なくない。シーズンを通じてチームの中心に据えることはリスクが大きい。ステファン・エルシャーラウィ、モハメド・サラーらのスピードを活かしたテンポの早いサッカーへの適応も難しい。
しかし限られた時間ならば、イマジネーション溢れるプレーを存分に披露できる。相手にとっても、勝負どころでトッティのような選手が出てくるのは、非常に厄介だろう。特にトリノの選手は、3分間であっても出場してほしくないはずだ。
ベンチの中の脅威
契約延長を勝ち取り来季もローマでプレーするか、現時点では不明だ。キャリアの終盤を迎えたレジェンドの身の振り方は、いつだって難しい。イタリアではパオロ・マルディーニとハビエル・サネッティが惜しまれながらミラノの両雄で引退したが、それは稀有な例だ。
トッティはジャロ・ロッソ(ローマの愛称)の選手としてキャリアを全うすることを望み、ファンもそれを願うだろう。しかし、アレッサンドロ・デル・ピエロ、スティーヴン・ジェラード、イケル・カシージャス、シャビ・エルナンデスですら愛するクラブを離れる時代だ。ワンクラブマンを貫くのは簡単ではない。残るのであれば、選手側にも譲歩が必要となる。
それは、切り札としてベンチに座ることではないだろうか。つねにチームの中心に君臨してきたバンディエラにとって、レギュラーからの降格は受け入れ難いかもしれない。しかし、少なくともピッチ上では、絶対的な存在ではなくなりつつある現実と向き合うことも必要だ。遅れてくる主役も悪くないだろう。
たとえベンチスタートでも、1点が欲しい展開で背番号10がピッチに入るとき、スタディオ・オリンピコには万雷の拍手とコールが響くはずだ。そして、王子はそのファンタジー溢れるプレーでチームを救うだろう。