フランクフルト戦での香川真司(GettyImages)
5月7日、残留争いに巻き込まれているフランクフルトとのアウェーゲームで、ドルトムントは2016年に入ってからリーグ戦で初めて黒星を喫してしまった。
すでにリーグ優勝の可能性はほぼ消滅しており、目標としているのは5月21日に行なわれるバイエルンとのドイツ杯の決勝でタイトルを獲得することだった。
そのため、この日のドルトムントは新たな攻撃の形を模索するため、今シーズンの公式戦では初めて中盤をダイヤモンド型にした4-4-2の布陣で臨んだ。香川真司は、トップ下のポジションで、公式戦では7試合連続となるスタメン出場を果たした。
「今回の敗戦の責任は私にもある」
試合後にトゥヘル監督がそう語ったように、この新布陣は機能するどころか、5バックにして守備をかためてきたフランクフルトの術中にはまってしまった。ドルトムントは中盤をダイヤモンド型にしたため、サイドの高い位置に選手がいなかったからだ。
「こういう試合はサイドに起点を作らないといけない。でも、うちのサイドバックは基本的に低い位置でスタートしていて……。前に(攻撃的な選手が)5人いて、後ろに1ボランチ(シャヒン)しかいない。相手の速攻もあるので、そういう意味でも(サイドバックは)低い位置を取らざるをえなかったです。もうちょっとワイドに起点を作ってやらないとこういうチームを相手にしたときにはなかなか中が開かない。前半の戦い方は難しかったですね」
香川もそう振り返った。
後半開始時からは4-3-3に、後半20分過ぎからは3-1-2-4へと変更して、ドルトムントは状況を打開しようと試みた。しかし、前半14分の先制点を決めたフランクフルトの守備陣が集中力を切らすことなく守備を続けていたため、決定機を作ることすら難しく、試合は0-1で終わってしまった。
「今日は、前半を無失点で終わることが何よりも大事でした。前半が無得点であっても問題ではなかったので。そういう意味では、本当にあの失点が痛かったと思います」
フランクフルトは残留争いに巻き込まれているために、この試合に勝たなければ後がない。そんな相手にゴールを与えなければ、時間がたつにつれて、彼らは前に出てこざるをえなくなったはずだ。そうすれば、自力で勝るドルトムントがその隙をついてゴールを決めるような展開となってもおかしくなかった。結果的には新布陣の失敗と、本来はドルトムントが得意とするショートコーナーから許した先制点が重くのしかかることになった。
また、この週のトレーニングでは、ドイツ代表のギュンドガンが、リラックスしながら身体を動かす目的で行なわれたバスケットボールの最中に怪我をして、今シーズン中の復帰が絶望となるアクシデントもあった。
ピッチの外でも親交のある盟友の怪我について香川はこう話した。
「イルカイ(ギュンドガン)は一番悔しい怪我の仕方をしたので、悲しいです」
3月5日に行なわれたリーグのバイエルン戦ではギュンドガンがいなければ成り立たないような5-2-3のシステムを採用して、対等に戦えていたために(試合は0-0の引き分け)、トゥヘル監督はドイツ杯の決勝では異なった戦いを強いられることになる。
そして、その試合ではベンチ入りメンバーから外れた香川には、5月21日のドイツ杯の決勝戦ではチームを助ける役割が期待される。
「しっかり調整して、いい手応えを得られるように、次の試合に向けてまた準備をしていきたいと思います」
2012年のドイツ杯以来となるタイトル獲得という目標を達成するために、香川にとって大きな意味を持つ1週間まもなく始まろうとしているのだ。
文・ミムラユウスケ