損害保険ガイド 平野 敦之 / All About
海外旅行保険と携行品損害の補償

海外旅行保険の加入を考える際、特に重視しなければならないのは、病気やケガの治療費用や救援者費用でしょう。これは渡航先によって医療費が高額になることがあるためです。
また、自分の持ち物(携行品)が盗まれたりしたら同じように大変です。しかし、携行品のように持って歩きまわるものを保険で補償するのは、実はリスクが高いのです。
海外旅行での携行品損害は病気やケガのように自分の体のことではありませんから、致命的なダメージを負うわけではないかもしれません。それでも、楽しい旅行の最中に自分の所有物が被害に遭うのは精神的にはショックでしょう。
携行品にも高額なものはありますし、盗難やひったくりなどの軽犯罪は非常に件数が多いため、大事な補償の一つです。海外旅行保険の携行品損害について、特徴や気を付けておくべきポイントを解説します。
海外旅行保険の携行品損害とは?
そもそも携行品とは、保険の対象者である被保険者が所有、かつ旅行行程中に携行する身の回り品のことをいいます。具体的にはバッグ、カメラ、時計、衣類などはもちろん、宿泊券や旅行券などまで含まれています。
ちなみに「所有」というのは、自分(被保険者)の居住施設内(自分の住まいですね)にある間は保険の目的に含まれません。「携行品」というように、携行している、移動・搬送しているような状態をイメージしてください。
バックをひったくられた、カメラを落として破損させた・水没させたなど海外旅行保険の中でも保険金の請求件数の多い補償です。海外にいけば窃盗などの軽犯罪は、観光地でもいくらでもありますから、油断した隙に自分の持ち物を盗まれかねません。
また病気や怪我、飛行機の遅延、相手のいる損害賠償事故と違い、携行品の損害は不正請求もある補償です。誤って落としたか、わざと落としたかは本人にしか分からないからです。その気になれば盗難被害でも同じようなことができます。携行品損害はその意味ではモラルの問われる補償でもあるのです。
海外旅行保険、携行品になるものならないもの
自分の所有している携行品だからといって、何でも保険の対象となるとは限りません。携行品の対象にならないもののうち、間違えそうなものをピックアップしてみます。
・現金、小切手、有価証券など
・クレジットカード
・危険な運動(ピッケル等の登山用具を利用する山岳登はん)をする間、当該運動のための用具
・ウインドサーフィンやサーフィンなどを行うための用具
・コンタクトレンズ、義歯
・動植物 など
海外旅行保険の契約上、危険と判断されているスポーツの用具やサーフボードなどは通常対象外です。初めて海外でこれらのことをする人は覚えておいてください。
現金やクレジットカードなども対象外です。クレジットカードについては、破損・紛失・盗難時の対応を事前にカード会社に確認しましょう。
実際の請求の際には、どこのブランド(メーカー)、いつ、いくらで購入したか、そのときの領収書など書類の提出を求められることがあります。本当に所有していたことの証明にもなるので、購入時に捨てずに持っていた方が請求はスムーズでしょう。
海外旅行保険の携行品損害の金額は?

携行品損害の補償金額は、加入するプランによって、例えば保険金額30万円や50万円などいろいろあります。しかし、仮に30万円などの契約をしていても、携行品1点あたりの金額に上限があるのです。
通常は、携行品1個(1組または1対)あたり10万円(ただし保険の目的が乗車券等である場合、合計5万円)が損害額の限度となります。
とはいえ、カバンやスーツケースなどでちょっと高めのものや、一眼レフカメラやそれにつけるレンズなどだと、10万円超えるものもあるでしょう。海外旅行保険の携行品損害の補償が50万円でも、1点の金額としてはカバーできないことがあるので注意してください。
海外旅行保険、携行品損害の時価と修理費
携行品損害の補償でもう一つ覚えておかなければならないのは、一般的には「時価」補償されることです。または修理が可能であれば修理費が補償されます。
時価とは、損害のあったものと同じものを新たに購入する必要金額から、使用した期間による消耗分を差し引いて計算した金額のことです。例えば、デジタルカメラなどが年数が経って古くなると金額が安くなっていくのと同じです。「買ってまだ1年しか経っていないし、あまり使っていないから……」と言っても消耗分は差し引かれます。
また「修理ができれば修理費で」と言いましたが、修理ができても当然のことながらそのときの時価が限度です。算定した時価が5万円でも、修理できて修理費が7万円の場合、時価の5万円が支払われます。
常に購入した金額が補償されているのだと思っていると、実際に被害にあった際に困ります。損害保険会社に文句を言って変わるものではありませんので、契約時に補償内容をよく確認しておきましょう。
ただし最近は、新価基準(新品の価格のこと)の補償でプランを設定する海外旅行保険もあります。時価基準での補償が嫌なら、携行品損害については新価基準の補償を検討してみましょう。
他にも保険事故の原因という観点でいうと、盗難やひったくられたというのは対象になりますが、単なる紛失や置き忘れなどは補償されません。基本的なところですが、実際に損害保険会社とよくトラブルになるケースです。
海外旅行保険の携行品損害は必要?

一概にいるかいらないかを論じるのは難しいのですが、ご自身の海外旅行についての状況を確認してみてください。
渡航先の治安状況、自分が海外旅行に慣れているかいないか、どのようなものを持っていくのか、など状況は様々でしょう。メジャーな観光地でもひったくりなどの軽犯罪は当たり前のように発生しますから、そのつもりで補償を考えてください。
基本的には、盗難に遭って困らないものはないでしょうから、最低限の保障は必要です。クレジットカード付帯の海外旅行保険はないかもあわせてチェックしましょう。
今回は携行品損害だけにスポットを当てていますが、実際自分のカバンが盗まれてパスポートや財布もなくなるとかなり大変です。クレジットカード会社などでも盗難にあった際の対応窓口はあるでしょうが、海外旅行保険でも同じことです。見知らぬ土地で日本語で対応してもらえればやはり安心です。単純に携行品の金額だけでなく、こういう面からも携行品の補償について考えてみてください。
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